七話 解決策 ページ7
「クラリス様は本がお好きなんですから、同じような趣味を持ったご令嬢を探してみてはどうですか？」
「でも、恋愛小説を読んでるだなんてあんまり口に出して言うものじゃないし……」
「口に出さなくても、他に読んでる方はいますって。だから、教室とかで堂々と読んでみてください。皆さん、親しみを持ってくださいますよ。クラリス様はお美しいんですからきっと皆さん近寄り難いんです」
そう言うと、クラリス様はなぜかいっそう暗い影を落とす。
「わたしは美しくなんて……」
予想外な反応に驚いてしまう。弟君はあんな自信満々に「俺がいちばんかわいい」とか言っているのに、彼女は正反対のようだ。どんどん沈んでいってしまうクラリス様にどんな声をかけるべきだろうか。そう悩んでいると、
「クラリスはきれいだよ」
と、向かいの席から声が聞こえた。見ると、ほんのり頬を染めたエヴァンくんが真剣な顔で言っていた。その声ははっきりと訴えるようだったが、ほんの少し熱をもっている。
「……ありがとう。変ね、エヴァンに言われるとすんなり受け止めちゃう」
そう言うと先程の表情とは一変して、眩しいくらいの笑顔を見せた。その笑顔を見たエヴァンくんは目を細めて笑う。
「クラリスのことだから、他のご令嬢に話しかけたりするのはできてないんだろう？だったら自分から動かなきゃ。ソフィアの言ったとおりにまずはやってみなよ」
「……そうね、やってみるわ。ありがとう、ソフィア、エヴァン」
「ちょっと姉さん、俺は？」
「アルはお菓子食べてただけでしょう」
庭に四人の笑い声が響いた。
△▼△▼△▼
第一回ティータイム解散後、私は気になったことをアルバート様に小声で尋ねていた。
「……あの、もしかしてエヴァンくんってクラリス様のこと……」
「ああ、そうだ。俺が物心ついた時にはエヴァンはすでに姉さんに惚れてた。それに、二人は俺が生まれるずっと前からの仲だからその頃からかもしれん」
「クラリス様は……？エヴァンくんに対してどう思ってるんですか？」
「さあ？よくわからないけど、あれはエヴァンの片思いじゃないか？あんだけバレバレなのに気づかない姉さんもアレだけど」
ってことは、下手したらエヴァンくんの片思い歴は両手じゃ足りない年数ってことだろうか。ずいぶんと一途なことだ。私は心の中でそっと応援するのだった。
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作者名：お芋 | 作成日時：2019年10月16日 21時
