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二十一話 騎士 ページ21

いやいやいや、待って待って待って。誰かさんに言わせれば『危機察知能力が足りない』私だけど、今回ばかりは流石にわかる。だって二回目だもの。それなのに……

「エヴァンとルイス様が手合わせ?!すごい試合になりそうね。エヴァンってばかなり強いのよ!ね、ソフィアも行きましょ!」

なんでこのお嬢様はこんなにもノリノリなんだ。お客様の手前、嫌とも言いきれず、仕事の一環でもあるためついて行くしかなかった。


△▼△▼△▼


鍛錬場につき、それぞれ試合の準備にとりかかる。試合時間が迫るにつれ、自分の心臓の音がどんどん大きくなっていく。ゆっくり息をしてなんとか落ち着かせていると、エヴァンくんがやってきた。

「ごめんな、前グレンさんに注意されたのに……」
「ううん、大丈夫」

なんとか取り繕って笑ってみせる。そういえば、なぜエヴァンくんは急に手合わせなんて願い出たんだろう。

「この前の夜のこと、覚えてるか。おれ、あれから考えたんだ」

この前の夜、とはお茶会の日の宿でのことだろう。エヴァンくんはまっすぐにどこかを見つめる。その先には騎士の方々と親しげに話すクラリス様がいた。

「今日、クラリスがルイス殿と話してるところを見て、複雑だったけれど、それでもおれは嬉しかったんだ」

「おれの幸せはあいつの幸せだ。あいつが幸せなら、笑ってくれているならそれでいい」

「そして、おれはルズベリー伯爵家の騎士だ。この伯爵家に忠誠を誓った男だ」

こちらを見たエヴァンくんは晴れやかな顔をしていた。

「だから、この試合で全力で戦って、気持ちに区切りをつける。これがおれの答えだよ。勝ち負けは関係ないさ。ま、おれが勝ったら『出直して来い!』って言うかもしれないけど」

そう言ってエヴァンくんは笑った。

「わかった。頑張ってね!エヴァンくん」
「おう!ありがとうな」

そう返事をして向けた背中は誇り高い騎士のものだった。

二十二話 試合開始→←二十話 宣言



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設定タグ:使用人 , メイド , 貴族   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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作者名:お芋 | 作成日時:2019年10月16日 21時

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