二十話 宣言 ページ20
出発地点に戻り、服についた土をはらう。アルバート様はもう少しだったのに、と口をとがらしていた。
意外にも打ち解けていたような二人の様子を思い出し、胸を撫で下ろすがなんだか少し寂しい気がした。婚約が正式に決まれば、ルイス様と過ごす時間も増えるだろうし、ゆくゆくはクラリス様は公爵家に嫁いでしまうのだ。一使用人がそんなことを思っても仕方の無いことだけど。
「それにしても、姉さん意外と上手くやってたな」
「そうですね、なんだか楽しそうで良かったです」
「ああ。クラリスは最初こそアレだけど、気が合えばすぐ仲良くなれるから……」
そう言葉を交わしたあと、謎の沈黙が流れる。うっ、なんだこの空気は。喜ばしいことなのに嫌に重い……。
そんな空気の中、突如、後ろから声がかかった。
「あら、皆こんなところで何してるの？」
「ク、クラリス様！？」
重い空気の元凶がそこにいた。後ろにはルイス様もいらっしゃる。美形が二人並べば、やっぱり絵になるなあ。
そ、それよりも、覗き見がバレてはいけない。誤魔化すために逆に私は質問した。
「クラリス様こそどうかされましたか？なにかあったんですか？」
「えっと、ルイス様がうちの騎士団を見たいそうだから案内しようと思って」
「それならば」
スッと隣にいたエヴァンくんが前に出て、ルイス様と向き合う。
「ルズベリー伯爵家騎士団団長オーウェンの子、エヴァン。ルイス・アンダーソン殿に手合わせ願いたい！」
高らかに発されたその宣言に、ルイス様は頷き、答えた。
「王家筆頭騎士団団長ローガン・アンダーソンの子、ルイス・アンダーソン。エヴァン殿の申し出、引き受けよう」
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作者名：お芋 | 作成日時：2019年10月16日 21時
