十八話 来客 ページ18
それから数日経って、ルイス・アンダーソン様がいらっしゃる日になった。
帰ってからもいつものティータイムは続けられていたが、クラリス様の婚約の話題についてはなんとなく避けていた。応援する言葉をかけても、何やら気まずい雰囲気が流れて、避けざるを得なかったのだ。
今日はいよいよその日だ。何事もなく、無事に終わればいいのだけど……
公爵家のご子息を迎えるため、ロナルド様たちが夏季休暇で帰ってきた日並に入念な準備が行われていた。朝から駆け回り、クラリス様とは顔を合わせていないが、大丈夫だろうか。そんな心配をしながらも時間は迫り、到着の知らせが届いた。
△▼△▼△▼
「いや〜やっと開放された」
「……ここに来ていいんですか、アルバート様」
「いいんだって。俺の今日の重大任務は終わり。あとは静かにしてるだけ〜」
今日はお客様がいるということで、いつも屋敷内全般をまわる私の仕事は制限され、早々に片付いた。久しぶりに給湯室でくつろごうかとしていると、いつもより服をきっちり着たアルバート様がやってきたのだ。
あの日のお茶会でクラリス様との婚約宣言をしたルイス・アンダーソン様は、まず、旦那様とお話をし、その後ルズベリー家のご家族全員とお話したそうだ。
「どんなやつかと思ってたけど悪いやつじゃなさそうだよ。すごい真面目そうだったけどさ。兄さんが上手く緩和してる感じだけど、姉さんと二人になったらどうなるんだろうなあ」
アルバート様はそう言って、ニヤリと笑った。
「それで、今から姉さんと二人で庭のいつもの場所使って話すんだってさ」
「……なんでそれを私に言うんですか」
なんとなく嫌な予感がする。やめてくれ、巻き込まないでくれ、お願いだから。
「決まってるだろ!覗きに行こう!!」
「嫌ですよ!怒られるのは私ですし、下手したらクビになります!いや、離して、離してくださいぃぃ!!」
必死の抵抗も虚しく、私は十歳の少年にズルズル引きずられるのだった。
6人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:お芋 | 作成日時:2019年10月16日 21時