第三章 一話 ご帰宅 ページ1
日差しが日に日に強く感じられる今日この頃、私たち使用人は朝から慌ただしく屋敷内を駆け回っていた。
今日はこのルズベリー伯爵家本邸にロナルド様とクラリス様がお帰りになる日だ。
普段から綺麗な屋敷内をさらに綺麗に掃除し、最高の状態でお迎えする。そのため、私も例に違わず朝から掃除三昧だった。
「ソフィア!もうそろそろ到着するって!玄関に集合!」
「はい!」
掃除の手を止めて、エマさんの呼び掛けに答える。急ぎ足で掃除用具をしまい、玄関へ向かう。着くと、玄関の中には二人の到着を今か今かと待っている使用人たちと落ち着いた様子の旦那様とアルバート様。玄関の外には騎士団の人々がずらりと並んでいた。私はいそいそと使用人の列の後方へ並ぶ。
少しして、馬車の音が聞こえ、止まった。馬車の扉の開く音がして、降りてきた人がいるようだがよく見えない。
「「「おかえりなさいませ!」」」
いっせいに頭を垂れる使用人と騎士の方々について慌てて頭を下げる。
「ただいま」
「ただいま、皆」
低く凛々しい声と柔らかくもよく響く声が聞こえ、皆はいっせいに頭をあげる。使用人の肩と肩の間になんとか目を凝らし、声の主を目にとらえた。
そこにはブロンドに新緑の瞳を持った美男子と、ストロベリーブロンドに同じく新緑の瞳を持った美女がいた。
(……あれがロナルド様とクラリス様?!)
それはもう、たいそう整ったお顔立ちである。アルバート様が成長したら彼らのようになるのだろう。恐ろしき、ルズベリー家の遺伝子。
私が彼らの美貌に惚けている間に旦那様やアルバート様と言葉を交わし、長旅でお疲れになったとお休みなさるそうだ。瞬間、こちらを見たクラリス様とバッチリ目が合ってしまった。ニッコリ微笑まれ、あまりの美しさにドキドキしてしまう。ふと、前にエヴァンくんに言われたことを思い出した。
『もうすぐ夏季休暇でクラリスも帰ってくるだろうからもし機会があれば仲良くしてやってよ』
あの時はぜひ、なんて言ったけど……。
(あんなお綺麗な方と仲良くなんて……無理!無理すぎる!)
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作者名:お芋 | 作成日時:2019年10月16日 21時