18話 ページ19
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シンガポールといえばやはりこの夜景か。
57階にもなるらしいこのサイドデッキに腰かけていれば、満月もいつもより大きくみえる気がした。
ホテル、マリーナベイ・サンズの屋上プールは宿泊者限定の贅沢な空間。
二度と行く機会などないかもしれないからと、カップルや家族連れが並ぶ中で、ひとり私は心ゆくまで満喫している。
あのあと、レオン先生の家を出たのは数時間前のことだ。
ホテルに着いた頃には、すっかり日も暮れていたが、園子、蘭と連れ立ってさっそく夜のプールへとくり出した。
その後、園子はホテルに戻ってきた京極さんに会いに行って、蘭はプールの中へ。私はといえば、水着を持ってきていなかったから、こうして外から楽しんでいるというわけ。
それにしても、新一は今頃どうしているのだろうか。
地上200メートルに吹き込む風にその思いを馳せた。
新一、つまりアーサーヒライの方である。
ホテルに着いた頃には、いつの間にかその姿はなかった。現地の子供という設定を装っているからして、ホテルまでついてくるわけにはいかないのは仕方ないが、身を寄せるところもない。
新一に変装した快斗はこんなに素敵なホテルに泊まっているというのに、当の本物は宿無しというのは少々かわいそうというか___。
「お、ちょうどいいところにいんじゃねえか」
聞きなれた日本語がすぐそばから私を呼んだ。
「…前言撤回、全然かわいそうじゃない」
「なんのことだ?」
「こっちの話」
すっかり現地の子供に馴染んだアーサーヒライはいつのまにか私の横に立っていた。
タイミングがいいのか、悪いのか。彼もたいがい神出鬼没である。
「今までどこ行ってたの」
当然の疑問を投げかければ
「まあ、ちょっとな」
答える気のない返答をついた。
「まあ、なんにしても泊まれたんだね」
「泊まるって……。やべ、そういや考えてなかったぜ……」
「え?どういうこと、チェックインして入ってきたわけじゃないの?」
先も述べたが、ここは宿泊者限定。ここにいるということはつまり、無事に宿が決まったということだと思ったのだが、それではまるで違うとでも言うようだ。
まさか突然降ってきたとは言うまい。本当に神出鬼没だと、もはや笑えないものを目の前にしていると、彼も彼で苦虫を嚙み潰したような顔をしている。
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くり - 続きを読みたいです!パスワードを教えていただきたいです! (4月24日 18時) (レス) id: b0169ec3e3 (このIDを非表示/違反報告)
あいり(プロフ) - パスワード教えていただきたいです (4月23日 4時) (レス) id: fefd0b677e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 面白いです!続き気になるのでパスワード教えていただけませんか? (4月23日 0時) (レス) @page19 id: 544fb55cbc (このIDを非表示/違反報告)
kulomi(プロフ) - 凄くおもしろかったです!続きを読みたいのでパスワード教えていただけませんか? (4月21日 16時) (レス) id: 99d597c65c (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 続きを読みたいのです!パスワード教えていただいてもいいですか? (4月20日 18時) (レス) id: b0169ec3e3 (このIDを非表示/違反報告)
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