【怪盗キッド】怪盗さんとバカは。12

558話 ページ34

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それから、私はこれまで自分に嘘なんて、一つも言っていなかった。
彼を見てムカつくのも、安心するのも、心配するのも………好きな気持ちにも。否定されたって嘘ではない。
だって私は、自分に嘘をついて立ち回れるほど器用な人間じゃないだろうから。

逃げるのは泥棒の十八番だ。
でも同時に、逃げてばかりではダメだと教えてくれたのも彼だった。
何もできない自分に嫌気がさしていた時も。迷惑をかけたくなかったあの時も。逃げていては、何も掴めないと、月を背に逃げる彼は宝石を手にしながらそう言った。
だから私は、まだ彼のことを追いかけている。

といっても、今更どうこうできる見込みは、あいにく存在していない。
でも、快斗を放っておきたくはなかったのだ。こうなれば後は、感情論だ。
手立てなんてないからただの我儘。
でも、そう決めた。


そんなわけで、来るな、行く、の平行線論争。

すると、全く予期せぬところから、青子ちゃんの言葉が降ってきた。今度一緒にキッドの予告現場に行こう、とのお誘いだった。
彼女曰く、落ち込んでいる私を励ましたいとの事。
そのために、私がキッドファンなら、キッドでもみたら元気が出るんじゃない！？という理由からで。

当然、私がこれに乗らない手はない。もちろん、快斗はそれに大反対したのだが………。

結果は言うまでもない。



だから、これも励ましのうちの一つなのだろう……多分。それを無下にはできないし__

「ど、どうかな……」
「バッチリだよ！！」
結局根負けして、出動服に着替えた女子2名がついに出来上がるのは時間の問題であった。

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