556話 ページ32
_
「ま、まずいって…!青子ちゃんはともかく、私がバレたら…!」
そんな気後れする私とは反対に、彼女はその顔に一点の曇りなんて見せず、出動服に体を通していく。
「だーいじょうぶよ!ちょっとだけだし。それに、こんなに機動隊の人がいるのに、いちいち顔なんてわかんないって!」
それはそれで、警備として大問題では。
しかし、混ざればバレないという言葉は、妙に思い当たる節があり、苦い顔を浮かべる羽目となった。
一方で、彼女の好奇心に満ちた顔には、悪気なんて一切ない。
プレゼントの包装紙を開ける子供のように、機動隊に成り代わっていく彼女を、一体誰が止められるだろう。
さすが、中森警部の娘さんと言ったところなのか。
やると決めたら、全力投球である。
事の発端は彼女の、機動隊の出動服着てみたいなぁ〜の一言で始まった、悪ふざけ。
そして何と言う事だろう。
今、私達の手元には、お望みの品だ。
まさかそんな一言で、本当に貸してもらえるだなんて思わない。
警部には内緒だとは言え、そんなにホイホイと部外者に予備の出動服を渡すのはいかがなものかと思う、機動隊員。
それも、青子ちゃんの人の良さと、警部が慕われるからこそ為せる技なのかもしれないが。
いや、だからと言って、犯行日に貸して良いものか。そんなのだから、いつもキッドに出し抜かれるのだ、と呆れる。
幸い、今回に限っては私も青子ちゃんも彼の変装ではないので、貸した本人が戦犯になる事はないが、そのうち痛い目を見るに違いない。
だが、今はそれよりも。
「バレた時にタダじゃ済まなさそう……」
そのことで頭がいっぱいだ。
快斗にいくらヘッポコだと言われようとも、相手は警部だ。そして私たちは素人。
外にはヘリが飛び交い、中も屋上も警備が張り付いているのは、ここ秀峰美術館_____キッドの予告現場。
厳戒態勢が敷かれ、漂うのは物々しい空気だ。
それにたしかに、いつもより警備の気合が入りようも違う。
快斗が言うには、インターポールに日本の警察がなめられないように張り切っている所為らしい……が。
だからこそ、職場体験してました〜……なんて誤魔化すことができる雰囲気ではないことくらい、今日ばかりはこの私ですら一目瞭然なのであった。
1436人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜美(プロフ) - コメント失礼します!前から作品が好きでした!もう一度読みたいのでよろしければパスワード教えていただきたいです(><) (4月15日 2時) (レス) id: fbde56e50b (このIDを非表示/違反報告)
ころころ。(プロフ) - コメント失礼します!とても面白かったです!前作等の作品も気になるので可能であれば、パスワードを教えて頂きたいです🙇♀️ (4月11日 15時) (レス) id: 00f5510b14 (このIDを非表示/違反報告)
春花(プロフ) - コナン公開に向けてまた読みたいと思ってたのでとっても嬉しいです!!楽しみにしてます! (4月11日 10時) (レス) @page48 id: 27efe983cc (このIDを非表示/違反報告)
米(プロフ) - コメント失礼します!ひゃー!めちゃくちゃ面白くて是非もう一度読みたいと思っていたので嬉しいです!無理せず頑張ってください!応援してます!!! (3月6日 20時) (レス) @page48 id: 6ea4e387cc (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - コメント失礼します!とても面白かったので前作をもう一度読みたいので、良ければパスワード教えていただきたいです🙇♀️ (2月24日 10時) (レス) id: 7c015ce2b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ