555話 ページ31
_
「__ほんとにその理由が、快斗の命より大切なの」
売られた喧嘩を買う、なんてそんな次元の話ではないはずだ。
彼が天下無敵の大怪盗を名乗っていることは、わかってる。ちょっとやそっとで、そう簡単に捕まるはずがない事も知っている。
だけど今回は、相手が違うだろう。
法の番犬と戦うのではなく、犯罪界のナポレオンと渡り合おうとしているのだ。
きっとそれが危険なことくらい、私より当本人が一番わかっているはずで。
「快斗がそんなこと、する必要ないじゃん」
そもそも、そこらの泥棒とは違い、利益目的で動く事をしないのが、彼の信条であるはずなのに。
ビックジュエルでもない、その宝石を盗む必要はどこにもない。
だというのに。だからこそ。
「そこまでする理由が………!!!」
「____あんだよ」
決意の硬い声に、その一言だけで私は口を噤まされた。
手が届かないことが悔しく、どうしようもないまま押し黙るも、そのラインを簡単に超えてくるような彼の手が、いつものように頭に乗せられた。
「これだけは譲れねぇんだ」
ポンポンと頭の上を手が往復する。
「心配してくれて、あんがとな」
「そうじゃ、なくて…」
「へーきだっての。俺は華麗なる怪盗紳士だぜ?そんなヘマなんかしねぇよ」
「冗談言ってる場合なんかじゃ」
「冗談じゃねぇよ。………本気だ」
彼はそれから軽く笑う。
「言えば心配かけるって思ってたから、正直渋ってたんだけど」
「心配するに決まってんでしょ!それに、言わなかったら、もっとブチギレてたから!」
言うと、彼は苦笑いを浮かべた。
「わーってる。それに、そう悩んでる暇もなかったんだよ。その日は次の金曜日……あともう1週間もねぇからな」
厳密に言うならば、あと四日後ではないか。あまりにも急、というか。
「取り付けちまった約束、向こうが犯行声明を出すのは今日か明日、ってとこだ。今更、尻尾巻いて逃げるわけにはいかねぇ」
ここまでの彼の言葉を、もう覆せるはずがない事を私たちは知っているから、黙って聞くしかないのだ。
「それに俺は、"約束"は守るタチなんだよ」
何の、約束だろう。
それは、そのナイトメアとやらと交わした約束か_____それとも。
真剣な彼の瞳と真っ直ぐにかち合った。
「ぜってぇに、な」
自身に言い聞かせるような、固い決意とともに、その日に向けて車は走って行った。
1436人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜美(プロフ) - コメント失礼します!前から作品が好きでした!もう一度読みたいのでよろしければパスワード教えていただきたいです(><) (4月15日 2時) (レス) id: fbde56e50b (このIDを非表示/違反報告)
ころころ。(プロフ) - コメント失礼します!とても面白かったです!前作等の作品も気になるので可能であれば、パスワードを教えて頂きたいです🙇♀️ (4月11日 15時) (レス) id: 00f5510b14 (このIDを非表示/違反報告)
春花(プロフ) - コナン公開に向けてまた読みたいと思ってたのでとっても嬉しいです!!楽しみにしてます! (4月11日 10時) (レス) @page48 id: 27efe983cc (このIDを非表示/違反報告)
米(プロフ) - コメント失礼します!ひゃー!めちゃくちゃ面白くて是非もう一度読みたいと思っていたので嬉しいです!無理せず頑張ってください!応援してます!!! (3月6日 20時) (レス) @page48 id: 6ea4e387cc (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - コメント失礼します!とても面白かったので前作をもう一度読みたいので、良ければパスワード教えていただきたいです🙇♀️ (2月24日 10時) (レス) id: 7c015ce2b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ