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552話 ページ28

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すると、水気を含んでおとなしくなっていた癖毛も、私の手によってみるみるとボサボサになっていく。冷たかった肌も、少しずつ体温を取り戻しているようである。
顔と髪なんて見境なく、気が済むまでゴシゴシとタオルを当て。
首の後ろから胸上辺りにタオルをかけ始めた時に、タオルの中から顔を出した彼が
「いってぇよ!オメーなぁ…!加減ってもんが!!」
「あんたが、いつまで経ってものろのろしてるからでしょ!」
「鈍臭さに関しては、オメーにだけは言われたくねぇ!」
「じゃあ服は脱ぐ!そんなの拭いたって無駄でしょ!」
「お、おい!やめろ!わーった!わかったから!服は自分で脱ぐって!!」
私が服に手をかけようとすると、慌てて自身でばんざい姿勢で服を脱いだ。黒のインナー、一枚になった彼。
私はそれを有無を言わさず受け取ると、ビニール袋の中に入れる。重みのあるそれは、絞れてしまいそうですらあった。
「はい、これ。替えのトレーナー」
渡したものを受けとった彼は、服を見て。
それから、ボサボサの前髪をかきあげると
「ったく……………。準備がいいこって」
なんともまあ、わかりやすい照れ隠しだ。

「感謝は寺井さんに、ね」
この準備の良さも、ここまでの足も、全て寺井さんのおかげである。
と、ミラー越しに運転席の彼と目が合い。
 
「誘導も実に見事なものでございましたよ」
笑顔でそう素直に褒められると、少し照れてしまう。
「……カーナビにお礼が言いたいなら、私に言ってもいいけど」
「それに、真っ先にこの雨の中外に出られたそのお姿も非常に……」
「そ、それは言わなくていいです!」
追い討ちをかけるような言葉を慌てて塞げば、彼はにこりと微笑み、それ以上言葉をつなぐことはなかった。

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亜美(プロフ) - コメント失礼します!前から作品が好きでした!もう一度読みたいのでよろしければパスワード教えていただきたいです(><) (4月15日 2時) (レス) id: fbde56e50b (このIDを非表示/違反報告)
ころころ。(プロフ) - コメント失礼します!とても面白かったです!前作等の作品も気になるので可能であれば、パスワードを教えて頂きたいです🙇‍♀️ (4月11日 15時) (レス) id: 00f5510b14 (このIDを非表示/違反報告)
春花(プロフ) - コナン公開に向けてまた読みたいと思ってたのでとっても嬉しいです!!楽しみにしてます! (4月11日 10時) (レス) @page48 id: 27efe983cc (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼します!ひゃー!めちゃくちゃ面白くて是非もう一度読みたいと思っていたので嬉しいです!無理せず頑張ってください!応援してます!!! (3月6日 20時) (レス) @page48 id: 6ea4e387cc (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - コメント失礼します!とても面白かったので前作をもう一度読みたいので、良ければパスワード教えていただきたいです🙇‍♀️ (2月24日 10時) (レス) id: 7c015ce2b9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Frisk | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年10月3日 23時

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