547話 ページ23
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言葉一つでも、何かが違うと、私は気づいてしまうほど、彼とたくさんの時間を過ごしてきてしまっていた。
だから、そんな風に、無理に笑って欲しくなんて。
どうして、どうして、そんなことがわかってくれないんだろう。
軽やかなクリスマスソングが、耳につく。
「ん、どーした?」
なんて、そんなの。………そんなの。
「……か」
「え、なん…」
「バカバカバカバカバカバカ!!!うるさい!!」
息を呑んだ彼に、私は思いっきり睨んだ。
どうして、快斗はこんなにも私のことに気づいてくれるのに、そんな簡単なことがわからないのだ。
どうして、快斗は急に変わってしまったのだ。
どうして、快斗は………どうして。
怒ってるなら、言ってよ。
間違えてるなら、言ってよ。
「もう、快斗なんて……」
声を出そうと息を吸うと震えた。懸命に口を開く。刺すような冷たい空気が喉を貫いた。
「快斗なんて………!!」
わからない。こんなに大切なのに、こんなに大好きなのに。
「大っ嫌い!!!!」
ツリーの前で、そんなことが言いたかったわけではなかった。
シン、と静かになる。言い切った私は息を荒げて唇を噛んだ。
怒って、ほしかった。謝るから、だから私に、なにか………。
「そうだよな」
冷静な彼の声が耳に届いて、ハッとなって顔を上げた。
あの……顔だ。あの時と一緒だった。
推しはかるのには難しい、苦しいような悲しいようなそんな表情。
「う……そ、ごめん……ちが……」
「間違ってねぇよ」
静かに響く。
彼は、怒ってなんていなかった。ましてや、どこまでも優しげに、それでいて気味が悪いほど、落ち着いていて。
「ちがう、本当は私は………」
「ごめんな」
頭を撫でられた。どんどん彼が遠くになってしまう気がした。
「ちが、ちがう!!私は快斗のことが……!!」
「__俺なんか、ぜってーにやめといた方がいい」
耳を疑うほどに冷静な声だった。
それから、絶望に似た感覚に襲われる。突き放されたような、そんな。
しかし、あまりにも快斗が優しく笑うから、私はもう何も言えなかったのであった。
深夜12時を知らせる、時計台の鐘が忌々しく鳴り響いた。
「おっと、もうこんな時間だし、帰ろうぜ」
早く帰らねぇと、風邪ひくぞ〜と、いつもの調子に戻った彼に。
ただ一つ、これが真実だったのだと。
こんなことをしてやっと、私は知ることができた。
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亜美(プロフ) - コメント失礼します!前から作品が好きでした!もう一度読みたいのでよろしければパスワード教えていただきたいです(><) (4月15日 2時) (レス) id: fbde56e50b (このIDを非表示/違反報告)
ころころ。(プロフ) - コメント失礼します!とても面白かったです!前作等の作品も気になるので可能であれば、パスワードを教えて頂きたいです🙇♀️ (4月11日 15時) (レス) id: 00f5510b14 (このIDを非表示/違反報告)
春花(プロフ) - コナン公開に向けてまた読みたいと思ってたのでとっても嬉しいです!!楽しみにしてます! (4月11日 10時) (レス) @page48 id: 27efe983cc (このIDを非表示/違反報告)
米(プロフ) - コメント失礼します!ひゃー!めちゃくちゃ面白くて是非もう一度読みたいと思っていたので嬉しいです!無理せず頑張ってください!応援してます!!! (3月6日 20時) (レス) @page48 id: 6ea4e387cc (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - コメント失礼します!とても面白かったので前作をもう一度読みたいので、良ければパスワード教えていただきたいです🙇♀️ (2月24日 10時) (レス) id: 7c015ce2b9 (このIDを非表示/違反報告)
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