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544話 ページ20

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いつも通りだった。
それは何もなかったように、普段通りで。
しかし、いつも通りだと意識することが、いつもと違っていた。

原因は、あの暗がりの中で落としてきてしまったのだと。そう悔んだって、もう泥に塗れては、到底見つかりそうにもなかった___。




もちろん、登下校は何があっても必ず一緒についてきてくれるようになったし、不安な心中を察するその能力が高いのか、ふと大丈夫だと言わんばかりに、頭に手が乗せられることはあった。

もう、ストーカーに悩まされることも無くなった。全てが解決した、喜ばしくて嬉しいことだった。
そのはずなのに、そうやって頭に手が置かれる度に。心の中にある歪が、また大きくなる気がしていた。

_____私は、あの時彼が見せた顔に、ずっと引っかかっていたのだ。

ありがとう、そう言っても、彼は微笑むだけ。

「ねぇ、怒ってる?」
ついに、そう聞いた。他愛無い話で学校から帰ってくる、そんな時に何の前触れもなく、そう口にした。
「え、あ……この話つまんなかった?」
「ううん、別にそうじゃなくて」

「じゃあ、なぁんで、俺が怒ってんだよ」
そう笑う。つまり、何もなかったみたいに振る舞うのだ。

たしかに、いつも通りで、何一つ変わってないはずだ。
明確にどこが、と聞かれると答えられないくらいの小さなもので。でも、何かが違ってしまっている気がしていた。
よくある普通の話をして、私はこんなにも楽しかった、そのはずなのに。

それが、逆に私の心をざわつかせる。

そして、その原因は間違いなくあの事件以来だと、わかって。

自意識過剰かなぁ。
いやでも、あの顔、一体なんだったのだろう。
1人になると、頭に浮かんでくることはそのことばかりだ。

諦め…?懺悔…、自責……。複雑な表情は、あの日からずっと頭を離れずにいる。
わからないことばかりである。
それでも、ただ一つ。どうしても、彼の心が遠くに行ってしまった気がすることだけは、なんとなく感じていて。

「私のこと、ついに嫌になっちゃったかなぁ」

そして、導き出される答えはこれだった。
世話のかかる女だと、お荷物だと。それは元からだが、とうとう我慢の限界なのかもしれない。
いや、お人好しの彼だから、どうせ目の前に私みたいな世話焼き女がいたら、手を差し出してしまうのだろうけど。

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亜美(プロフ) - コメント失礼します!前から作品が好きでした!もう一度読みたいのでよろしければパスワード教えていただきたいです(><) (4月15日 2時) (レス) id: fbde56e50b (このIDを非表示/違反報告)
ころころ。(プロフ) - コメント失礼します!とても面白かったです!前作等の作品も気になるので可能であれば、パスワードを教えて頂きたいです🙇‍♀️ (4月11日 15時) (レス) id: 00f5510b14 (このIDを非表示/違反報告)
春花(プロフ) - コナン公開に向けてまた読みたいと思ってたのでとっても嬉しいです!!楽しみにしてます! (4月11日 10時) (レス) @page48 id: 27efe983cc (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼します!ひゃー!めちゃくちゃ面白くて是非もう一度読みたいと思っていたので嬉しいです!無理せず頑張ってください!応援してます!!! (3月6日 20時) (レス) @page48 id: 6ea4e387cc (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - コメント失礼します!とても面白かったので前作をもう一度読みたいので、良ければパスワード教えていただきたいです🙇‍♀️ (2月24日 10時) (レス) id: 7c015ce2b9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Frisk | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年10月3日 23時

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