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アルハイゼンは顔を顰めて怪訝な様子を隠さない。
「えっと…僕は元々君達民より弱いんだ。だから強者の在り方を知らない」
「…つまり？」
「強者っていうのは君の視点からだけ見た僕への評価ってだけだよ」
そう言うとアルハイゼンはまた考え込んでしまった。
神柱という存在に曖昧さを感じる辺り、とても聡明な民である事がまた証明された。
まぁ、盲目的に肩書だけで物事を見る様な民じゃ、知恵の証なんて貰えないか。
「まぁ簡単に言えば、もっと僕の事知って欲しいなって事」
ずっと疑われてたし、と加えるとアルハイゼンは目を見開いて本当にわからないという顔をしていた。
「…すまなかった。貴方がどう言った生き物なのか分からず距離を置いてしまった」
「いいよ、それがアルハイゼンなんだろう？」
よしよしと背伸びして頭を撫でるとアルハイゼンは僕の手をそっとおろした。
距離はまだ縮められそうにないみたい。
―――――――
旅人side
「明日はニィロウの踊りを見る日だな！オイラ今からすっごく楽しみだぞ！」
「はいはい。早く寝ないと明日起きれないよ」
目を爛々と輝かせて楽しそうに語るパイモンを宥めてタオルケットをかけると、物の数秒で寝てしまった。
さっきのテンションどこ…よく食べよく寝って事にしておこう。
「A帰ってこないなぁ」
散歩に行くと言って出ていったAは、数時間たった今も帰ってこない。
おかしいな、もう私達寝ちゃうのに。
宿の扉の外を覗くと、少し離れた場所から小さく話し声が聞こえた。
Aかな？と思い、折角なら脅かしてあげよう、と忍び足で近づく。
「…て…よ」
「何してるのかな？」
徐々に明らかになる姿はAの姿その物だったので、木に隠れて様子を窺う。
「大体、何が強者じゃないだよ。謙遜も行き過ぎると傲慢だろう」
「僕が弱いのは事実だよ、君が一番わかってる癖に」
「俺の弱さとお前の弱さは違うだろう」
Aが会話していたのは、声質的に少し年下の男の子。言い合いしてるみたいだ。
この子は誰なんだろう、話の筋が見えない。
「兎に角、話は戻ったら聞くから今は邪魔しないで」
「今回は超手間取ってるらしいからな。頼むよ神柱サマ、苦しむのは俺とお前なんだから」
「…わかってる」
悔しそうに声を震わせたAは何処かに走り去ってしまった。
男の子は狂った様に笑い、いつの間にか姿を消してしまっていた。
私は何故かずっと息を殺していた。
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作者名：光 | 作成日時：2023年9月17日 22時
