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轟々と吹き荒れる吹雪の中一人飛んでいる僕はなんて異端だろうか。
白くくすんだこの地は僕にとっては良い物でも、民にとっては中々に辛い環境だろう。
手の先から溢れ出る元素をなんとか抑えながら、目の前に佇む建物の中に入った。
コツコツと靴音が響く音が大きく聞こえる程、この空間は静けさで溢れ返っていた。
ファデュイの構成員誰一人いない、不気味な程に藍い空間だ。
歩みを進めていると、一番奥の大きな扉の奥から微かだが話し声が聞こえた。
ここか、と僕は何の躊躇もなくその扉を開け放った。
「…これはこれは、何とも珍しいお客方ですね」
「今は貴様が入ってきていい時ではないぞ神柱」
「邪魔をしたのは詫びるよ。でもここに来たのは君達の女皇様の思し召しだよ」
来たくて来てる訳じゃない、と言うと召使と富者は黙った。
そのまま真っすぐ棺らしき物の前へ行き、佇む道化の前に淑女の亡灰を差し出した。
「…これは」
「淑女の亡灰だ。これをどうするかは君達で決めてくれ」
道化は何の感情の起伏も起こさず、それを静かに僕から受け取った。
棺の傍で歌っている少女は僕を見る事もなく、穏やかに歌い続けている。
僕はそっと棺に一輪花を手向け、一番後ろの席へと移動し腰を下ろした。
そうして式は、恙なく無感情に執り行われた。やはりファデュイの葬式は冷たい。
僕はそれをぼーっと見つめ、そして追卓の意を表す様に目を閉じた。
――――――――
「や、神柱。随分久しぶりだね、びっくりしたよ」
「…公子。曲がりなりにも執行官やってたんだ」
「酷くない？え、俺割と真面目にやってるよ？」
「…神柱、同意見よ」
「傀儡にまで言われちゃったよ公子…」
ちらりと傀儡を見ると、彼女はそっと目を閉じた。
傀儡は、見れば見るほど帝君や留雲様に教わった帰終様に見目がそっくりだ。
そんな訳がないと僕は頭を振った。帰終様はずっと前に亡くなられているのだから。
「にしても神柱、その格好でよくここに居られるね。寒くないの？」
「神柱は寒地生まれだからな、私等とは感覚が違うのだ」
ファトゥスは話に入ってくるのが好きだな、とげんなりしながら思った。
博士はにやにやと笑みを浮かべてこちらに近づいてくる。
「…そう、だから力も出しやすいんだ」
バキバキッと音を立てながら僕の隣には大きな獅子の形をした氷像が姿を現す。
その氷像は本物の獅子の様に博士に大きく唸り吠えた。
「あんまり図に乗るなよ、博士」
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作者名：光 | 作成日時：2023年9月17日 22時
