・（序盤ちょっとグロ） ページ13
どうやら、僕は長く眠っていたらしい。
僕が空中から無抵抗で雷とともに落ちてくるのを見て、心海が慌てて駆けつけたのも既に遅く。
僕の首や足はあらぬ方向に曲がり、切り傷や打ち傷で目も当てられない状況だったそう。
辺り一面に血が滲み、幸いにも心臓は動いていたが息をしていなかったそうだ。
心海はすぐに治療してくれたそうだったが、あらぬ方向に折れた首はどうしようもなく、諦めかけていた。
しかし、不思議なことに僕の首は淡い風元素と氷元素に包まれてみるみるうちに治っていったと。
多分魈が稲妻に来る前にくれた仙力と僕の能力が共鳴して発動されたんだと思う。
これは魈に感謝だな…、と自身の手足に能力をかけながら思った。
旅人や心海はまだずびずびと鼻を啜っており、どれだけ悲惨だったかわかる。
いやはや申し訳ないなぁ、と思いながら治った手足を動かした。
「よし、治った。旅人、僕が眠っていた間何があったか聞かせてほしいんだけど…」
「切り替え早すぎて無理…私達の情緒の心配もして…」
「え、あ…ごめん？？」
「いいよ許す、はぁ…泣きすぎて頭痛い」
そういって旅人は涙をぐしぐしと拭い、頬を軽く叩いたあとに話してくれた。
旅人達も邪眼の広がりに気づき、その邪眼により哲平が亡くなったこと。
邪眼工場に突入し、散兵と退治し、神子に助けられたこと。
終末番や長野原花火に力を借り、ファデュイと奉行の者が手を組んだ証拠などを盗んだらしい。
そして今日、その証拠を九条家の養子であり将軍の忠実な下僕である九条裟羅に見せる、と。
「めっちゃ話進んでない？」
「Aいなくてオイラたちすっごい心細かったんだからな！！」
ふんすこと怒るパイモンを尻目に、聞いたことを整理していく。
「そう…か、哲平が…」
「もう遅かったの…」
そう言って旅人はまた瞳を揺らした。
心海も悲しそうに悔しそうに拳を握っていた。
「でも、私達は前に進まないといけないから」
「そう…そっか。無理はしないでね」
「Aが言えたことじゃないと思うな〜」
覚悟を決めた旅人は揺れた瞳を強い眼差しに変えた。
こうやって数多の苦難を乗り越えたんだろう、こういう面は見習わないといけない。
「そういえば、今日見せに行くんでしょ？行かなくていいの？」
「あ゛っ…！」
「や、やばいぞ！」
二人は慌てて珊瑚宮を飛び出していった。
僕も心配そうな心海に断りを入れ、旅人達の後を追うように付いていった。
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作者名：光 | 作成日時：2023年9月17日 22時
