赤は苛立ちを感じる ページ27
店が閉まる時間帯、ちょうどに来てくれと言われ、ぼんやりと突っ立っていた。
街灯に負けない星達がチラチラと見え始めたが、また雲に覆われた。
冬の季節は日が沈むのが早い。
それに加え、手が冷える。
「お待たせしました」
横目で安室透氏の姿を確認し、顔に笑みを浮かべる。
「そこまで待ってません。もしかして、あの件のことですか?」
「それ以外のことで、こんな時間に呼び出したりしませんよ。」
おかしい。何がって、彼の雰囲気だ。
夜が近いからとかそういうのもあるのかもしれないが、根本的なものが変わった気がした。
相槌もせず、ただ彼をじっと見つめていると、安室透氏は困ったように笑った。いや、安室透氏じゃない誰かみたいな顔だ。知らないな。
「そんなに見つめられると穴があいちゃいます」
可愛げにそんなことを言ってるお前は…
「安室透氏。」
「なんです?」
正真正銘の安室透氏だが、違う。
“誰”だ?
「……なんでもないです」
「そうですか。」
「それで返事は…」
「ここじゃなんですから…」
私の言葉を遮るようにそういうと、まるで大事なものでも扱うかのように手を取った。
……知らないな、こんな安室透氏。
不覚にもそのエスコートの仕方にドキリとした。無論、男性に触られるような経験が乏しいためだ。決して、彼だからとかじゃない。多分。
「移動、ですか」
「ええ」
余裕を持ったつもりが、安室透氏の知らない笑顔にその余裕を削られた。
ーーー
「この車、乗り心地最高ですね」
「当然ですよ。手入れを怠ったことは一度もありません。」
「へぇ…壊したりとかは?」
「そうですね。このエンジン音とか…」
「安室透氏?壊したりは?」
「フォルムも最高ですよね。」
この人、この車何回か修理してたな…?
真っ白なボディと安室透氏の色黒の肌がとても合っていた。私が今座ってるのは助手席、この扉開けた時、一瞬だけ白馬に乗った王子様がふわっと浮かんできた。
というか、もう神々しいよね。ここからの運転手の横顔なんて、そうそう見れない。何こいつ、イケメン店員じゃん。ムカつく。
しかも美味しいハムサンド作りやがって、益々気に入らない。
「どうかしたんですか?眉間にシワよってますよ」
「イケメン店員が…」
「え?ありがとうございます?」
あー、なんか…すごく…ムカつく。
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白亜(プロフ) - 深月さん» ありがとうございます!頑張らせていただきます (2018年12月4日 19時) (レス) id: f49322fecc (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - このジン好きすぎる!笑 続き楽しみにしています! (2018年12月4日 11時) (レス) id: 8705ebf4fc (このIDを非表示/違反報告)
白亜(プロフ) - りずりさん» コメントありがとうございます!頑張りますw (2018年11月10日 15時) (レス) id: f49322fecc (このIDを非表示/違反報告)
りずり - 続きが楽しみです!頑張ってください(●・ω・●) (2018年11月10日 14時) (レス) id: f9e3d4f71f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白亜 | 作成日時:2018年10月7日 10時