不条理に終止符を 参

明かされ過去 ページ2

神 「…運ばれてきた恋人の他殺体を彼はなにも言わずに解剖したんです。その行為が証拠隠滅だと騒がれて誤認逮捕されてしまった。法医学者はその気になれば、痕跡を消すことができますからね。」

ミ 「なん、で…中堂さんはそんな…いや、…確かに、私も同じことをするかも…もし、大切な人のご遺体だったら…自分の手で真相を掴みたい…」

　《私もきっと…同じことをしてる…》

神 「彼の恋人、糀谷夕希子さんを殺した犯人はまだ捕まっていません。UDIラボには厚労省、警察庁と全国の医大を結ぶネットワークがあります。年間17万体に及ぶ不自然死の情報が集まるのはここだけ…。」

ミ 「それが、中堂さんがここにいる理由ですか？」

神 「はい、糀谷夕希子さんと同じ特徴を持つ遺体を探しているようです」

ミ 「犯人連続殺人犯なんですか？」

神 「中堂さんはそう見ているようですね…」

ミ 「その、ご遺体の特徴って言うのは…」

神 「口の中に印があると言ってました、警察を動かすほどの証拠にはならない微かな“赤い金魚”のような…」

ミ 「“赤い金魚”…そうですか…」

そこで中堂の話はひとまず終わったようだった。Aは見つからないようにとそっとその場を離れようとしたが、ミコトの言葉に足が止まった…。

ミ 「…じゃあ、Aはどうなんですか？」

　《ミコトさん？なんで、私のことまで…》

Aは離れようとした体をもとの死角の位置に戻し、話を聞き続けた。

ミ 「Aは中堂さんの、このことはきっと知っています。反対に中堂さんもAのなにかを知っている…だから、２人の間にはほかの人には入り込めない絆がある…」

神 「…なにかとは？」

ミ 「前に言ってました、水の中にトラックごと落とされたときに…。Aの論文で、なんでそれを書いたのかを聞いたら、ただの好奇心だって…。でも、あれはただの好奇心でかけるような内容のものじゃなかった…。」

　《そんなとこまで、覚えていたなんて…》

Aは自分でさえ言ったことを忘れていたものをミコトが覚えていたことに驚きを隠せないでいた。

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