【 utit 】拝啓、わたしの辛い日々【 urtnk 】

結婚 拾 ページ10

暫くすると赤髪赤目の男性がどたばたとしながら来て「 待たせてすみません！！ 」と勢い良く頭を下げられビックリする。

おどおどしながらも “ 顔を上げてください ” と言うと私の顔色を伺うようにして彼は顔を上げた。

その場で簡単な自己紹介をする。自己紹介中に何回も敬語が若干崩れていたりするところを見る限り敬語は苦手なのだろうか。
そう思って敬語はなくて良いと言えば、ぱあっと効果音が着きそうなほど明るい笑顔になり


「 ほんま！？敬語苦手やからありがたいわぁ！ 」


と感謝してきた。

そして「 美桜さまは他の令嬢さまたちと違って優しいんやな！ 」とも。
曰く、他の令嬢たちは敬語が少し外れていたら怒る人がいるから苦手だとのこと。あとは顔のせいで言い寄られたこともあったのだとか。
… 他のお嬢さまってそんなものなのか。

そしてずっと何も話さない私を見て坂田さんは二葉さまのことについて話し出す。


「 うらさん … ご当主さまは色んな良くない噂があるけどほんまは優しい人なんよ 」


“ やからそんな緊張することないで ”
… この人は二葉さまの使用人というより “ 家族 ” だとか “ 仲間 ” っていう方があっていると感じた。

染み付いてしまった癖で何も喋らなかっただけ私を見て緊張しているのだと気遣ってくれて … 優しいと思った。

家にはそんな人はいなかったから。


「 お気遣い、ありがとうございます 」


でも、優しかろうと冷たかろうと私には関係なかった。
ただこの縁談が終われば私には帰る家なんて失くなってしまって、あとは野垂れ死ぬのみ。
でもそれで良いのかもしれない。だって死ぬときは辛いだろうが、あとは何も考えなくて良いのだ。

楽になれる。そう思った。


書斎に着いて、坂田さんは廊下で待っているといった。

私は案内された二葉さまがいるであろう書斎に足を踏み入れ、深々と頭を下げる。


「 お初にお目に掛かります。九重家の美桜と申します 」

「 … … 」


縁談の相手である二葉さまはなにやら文机で作業をしているらしく、私の方を見ようともしない。
けれど何の指示も許可もなく話し、動くことは私には難しかった。
だからいくらでも待つつもりで頭を下げたままの状態だった。

結婚 拾壱→←結婚 玖

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す