【 utit 】拝啓、わたしの辛い日々【 urtnk 】

結婚 拾壱 ページ11

「 何時までそうしてるつもりなの 」


降ってきた特徴的な、男性特有の低い声に よかった、聞こえてはいたのだ と少しばかり安堵する。
むしろ声を掛けてくれるだけ親切かもしれない。

私は一度顔を上げ、また深々と頭を下げる。


「 申し訳ございません。 」

「 いや … 、謝れとはいってないんだけど … 」


“ はあ … ” とため息を吐く彼。
顔を上げると、今度は窓から差し込む春の柔らかい日光に包まれた美しい彼の姿が目に飛び込んできて、目のやり場に困る。

綺麗な人だ。
美人には慣れていると思っていた。継母や千愛も相当整っていたし、天王寺家の面々も整った顔立ちが揃っていたから。

しかし彼は男性らしい格好良さがありつつも少し可愛らしい雰囲気を纏っていた。これがぎゃっぷもえ(・・・・・・)と言うやつなのだろうか？

… いや多分違うだろう。確かぎゃっぷもえ(・・・・・・)というやつは外見が男らしいのに中身は可愛らしいとか、そういうときに使う言葉のはずだし、なんて馬鹿げた思考をしつつも彼の声に耳を傾ける。


「 君が新しい婚約者候補？ 」


そう二葉さまに問われ、そうだと首を縦に控えめに振る。
すると二葉さまは少々嫌そうな顔をした。


「 いい？ここでは俺の言うことに絶対従って。俺が出ていけって言ったら出ていって。文句とか反論とか聞かないから 」


“ あと俺の仲間たちに手とか出したら許さないってことも忘れないでね ” と吐き捨てるように言ってまた背を向ける彼を、私は拍子抜けして見る。

もっと罵られたり蔑まれたりされるかもしれないと覚悟していたのに。
なんだ、そんなことでいいのか。そう思ってすぐさま了承した。

すると彼はなにか想定外だったのか “ は … ？ ” と声を出す。


「 あの、何か … … ？ 」


何も言わない二葉さまを見て私は “ あの、では … 失礼します ” と告げ、早々と書斎から退室した。

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