さんじゅご。 ページ37
太鼓鐘 side.
『zzz』
気持ち良さそうに寝ている主の顔をつつく。
綺麗な髪は敷物に散らばっていて、日の光が当たってないのにきらきらしている。
この本丸に顕現される直前、俺の中に流れてきたのは
主の少しの霊力と血と
微かな甘い花の匂いと
血の記憶だった。
ふと鏡を見ると、自分の目が赤くなっていた。
顕現する時、霊力より主の血が多かった所為で時々色が変わる。
多分この前手入れした奴らも同じ。
正直あの時は妬いた。
本丸で主の事1番知ってるのは俺だけだったのに…。
主は見透かした様に揶揄ってきたけど。
見習いに関してはもう殆ど放置になっていて、俺や初期刀の加州が教えている……けど、身に付かない。
付ける気がないからもういいって主は言ってた。
こんな状況で期間なしって俺も、この本丸の奴等にもきつい。
それに、数日前に顕現した鯰尾と骨喰も。
「白雪……白雪……、おっあった」
資料棚から刀帳を出して、まだ"修復中"の白雪藤四郎の頁を開いた。
「やっぱり脇差兄弟だから似てんなぁー」
『そっくりー』
「うわあ⁉︎」
いいリアクショーン、と拍手しているけど表情と言葉が全然合ってなかった。
「今、白雪はどうなんだ?」
『さあ?
声聞こえないから寝てるんじゃない?』
「ふーん」
主は詳しく話さないけど、多分色々分かってるんだと思う。
主の事は分かるけど、この本丸の事はまだ良く分かってない。
記録には過去にブラック本丸だったって書いてあったから、皆が人間を何とも言えない顔で見るのは仕方ない。
でも主は、吸血鬼だから。
察しが良い奴等は何となく分かってるから、警戒されてないけど様子見はされている。
「ほい」
『流石貞君、えらい』
血液錠剤を溶かした水を渡すと、頭を撫でられた。
主の過去を見たから分かる。
小さい子には甘い、絶対。
「よし、主!」
『?』
「提出期限迫ってる書類片付けるぞーっ」
『…………』
「捕獲ーっ」
あからさまに嫌そうな顔をして逃げようとした主の腰に抱き付いて止めた。
それに俺は知ってる。
「早く終わらせて、みっちゃんのご飯食べようなっ」
『……はぁ』
冷たくて不器用で
でも強くて優しい、
傷だらけの、俺の綺麗な主は。
俺の笑った顔とお願いに弱い‼︎
(へへっ)
((貞君…………かーわい))
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作者名：せーら | 作成日時：2022年8月14日 10時
