にじゅなな。 ページ28
「離して!」
『無理。
分からないならその体で味わって理解したらいいのよ』
「痛いっ」
「審神者っ」
アイは燭台切の手を振り払い、再び包丁を振り下ろした。
「いやぁあああ"っ!
っ……、…?」
いつまで経っても降ってこない痛みに夢が目を開けると、アイの手を手入れの対象になっている出陣部隊の堀川が抑えていた。
「堀川君!」
『……邪魔』
「…やめて下さい、荊さん…。
……お願いします」
アイは泣きそうになっている堀川を見た。
刹那廊下がバタバタと騒がしくなり、厨に懐刀の太鼓鐘が入ってきた。
「みっちゃんっ、見習い知らねえかっ?
出陣した奴らが……って主!」
「貞ちゃん!」
太鼓鐘は異様な光景に固まってしまったが、堀川とアイの腕を引いた。
「やらないなら仕方ねぇ!
主っ、部隊で重傷が何振かいるんだ、来てくれ!
ほら堀川も怪我してるんだから行くぞ!」
アイは太鼓鐘の言葉に深いため息を吐いた。
太鼓鐘はアイが来ると分かると手を離し、堀川を連れて行った。
『……今度言う事聞かなかったら…』
ダンッ
『殺しちゃうかもね』
包丁をシンクに突き刺すと、アイはさっさと出て行った。
…が。
『ちょっとアンタ、資材持ってきて』
と、燭台切に頼んだ。
燭台切は急いで手拭いを濡らして夢に冷やすようにと言って、厨を出ていった。
「っんのっくそ女っ‼︎
私に乱暴するなんてっ…‼︎
絶対許さないんだから‼︎」
ーーーーー
アイが手入れ部屋に入ると、第二部隊に編成されていた刀が薬研に手当てされていた。
名簿には、
五虎退
乱藤四郎
堀川国広
宗三左文字
和泉守兼定
そして隊長は、
次郎太刀
と書かれていた。
「ぁ…荊様……!」
五虎退はアイの姿を見ると嬉しそうに声を出し、それにつられて乱も嬉しそうにアイを見た。
「荊、重傷者は和泉守と宗三と次郎太刀だ」
「何があった?」
手伝っていた長谷部が宗三に尋ねた。
「ボスマスで検非違使が出現したんですよ。
レベルは1番高い次郎太刀に合わせて来ているので、レベリングの我々には…」
「兄様っ…!」
手入れ部屋に入ってきた小夜は宗三にすぐさま近付いた。
『はぁ……』
アイは面倒くさそうに部屋を見渡した。
『悪いけど、面倒な事は嫌いなの。
でも…』
(選ばせてあげる)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 326人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：せーら | 作成日時：2022年8月14日 10時
