ごじゅうご。 ページ10
「はい、座って」
鯰尾はAを座らせると赤くなっている右側の髪の毛をピンで留めた。
「正面から見ると目元ぐらいしか見えないけど、よく見ると耳にもかかってるね」
『ほんと?
顔は筋肉動いたら痛み感じるけど、耳はあまり感じなかったな』
「一応塗っておこうか」
『ん』
塗り薬を指に付け、Aの顔に塗っていく。
『ぃた』
「ごめんごめん。
ここ?」
『ん』
「上からお湯かかったなら、ここが一番酷いのかもね」
痛みが酷い所も丁寧に塗り、耳元も塗っていくとくすぐったいのか、Aがくすくすと笑った。
『擽ったいっ…』
「そう言われてもなぁー」
よし、と薬が入っていた物を置いてムラがないか確認していく。
『スースーする』
「効いてるみたいで良かったね。
しかもこれ、塗り薬なのに塗った後はサラサラしてるよ」
『……わあすごーい』
鯰尾はAの頬に指を滑らせると、塗り薬を塗った後のベタベタ感はなく、いつものようにサラサラの肌になっていた。
「塗り終わったか」
「うん」
『塗った後なのにベタつかないから2人でビックリしてたの』
骨喰も興味があったのか、薬を塗ったAの肌に触れた。
「すごいな。
サラサラだ」
「でしょ?」
『……あ、ここ小さく水膨れ出来てる』
ﾋﾟｼｯと固まるAに、2人は顔を見合わせて笑った。
ーーーーー
「やぁAさん、気分はどうかな?」
『あ、石切丸様。
今は大丈夫ですよ』
骨喰と鯰尾が厠に行っている時、部屋に石切丸が訪ねてきた。
「そうか、3日も目が覚めないから私も心配していたんだよ」
『なんかごめんなさい』
「いいや、君が謝る事じゃないよ。
寝ている間、何か夢とか見たかい?」
『特には。
普通に気付いたらここで寝てたって感じなので』
「最近は新しい主が来たり、鯰尾さんや君も近侍になったりしていたし。
何かおかしな事があったらいけないからね」
『あ、石切丸様。
ちょっと聞きたいんですけど、』
(私、本丸から出た後何処に居たんですか?)
(何で寝てたんですか?)
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作者名：せーら | 作成日時：2021年4月18日 22時
