はちじゅうはち。 ページ46
「あれ、雪ちゃん1人?」
『なんか薬研に呼ばれたみたい。
すぐ戻って来るって』
「そうなんだ」
『あ、それ手伝うよ』
薬研に呼ばれ、Aが1人で暇を持て余していると堀川が洗濯物を抱えて廊下を歩いていた。
Aは堀川の抱えている洗濯物を少し持って、一緒に歩き出した。
「別にいいのに」
『堀川君、たまに手伝ってくれるから私もたまには手伝おうかなって思っただけだよ』
「ありがとう。
…あ、兼さーん‼︎」
「お、来たな……て、お前も来たのか?」
洗濯場にやって来ると同じ当番である和泉守が既にいた。
『和泉守さん、堀川君だけに持って来させたらダメですよ?
ただでさえ数多いのに』
「へいへい、悪かったな」
『何のために筋肉があるんですかー?』
「之定と一緒にすんじゃねぇよ!」
「まあまあ兼さん、早く洗濯物始めようよ!
雪ちゃんも手伝ってくれてありがとう!」
『ううん、……あ、きょうだーい‼︎』
Aは、丁度彼女を探しに来た骨喰と鯰尾を発見すると嬉しそうに走って行った。
「元気なこった」
「そうだね。
……ん?」
堀川は空を仰いだ。
「どうした国広」
「え、……ううん、何でもない」
「?」
ーー見間違い、かな。
堀川は何かに引っかかったが、取り敢えず洗濯物を洗い始めていくうちに、違和感があったのを段々忘れていった。
しかし、その微かな違和感を見逃さない者がいる。
『……』
「…雪?」
「…」
「……ふむ」
「今、何か歪んだね」
「…みかづきさま、いしきりまるさま…」
「心配するな、今剣」
「何もない……というわけではなさそうですね」
「……」
「どうしたんだい、兄貴?
いつもは庭を歩き回るなんてしないのに」
「気分ですよ」
「嫌な気配がするねぇ。
あの子に、何もないといいけど」
「にっかりー、よそ見してると包丁で指切るよ?」
(…兄弟)
(ん?)
(今度は、"1人"にしないでね)
(当たり前だよ)
(俺たちは、ずっと一緒だ)
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作者名：せーら | 作成日時：2021年4月18日 22時
