よんじゅうきゅう。 ページ4
『私、顔冷やしてきます』
Aは顔を伏せたまま井戸がある方へ行ってしまった。
いつもなら骨喰が付き添うが、彼は珍しく何もしなかったことに加州は内心驚いている。
「Aと何かあったの?」
「…何も」
「何で追いかけないの?」
「……」
骨喰は暫く考えた後、雑巾を置いてAと同じ方向に消えて行った。
「…」
「はぁああ私の所為で…‼
後で手入れしてあげないとっ」
「……多分受けないかもね」
「え、…あ…そう、だよね。
……骨喰君、妬いてるのかな」
「何で?」
「朝、明石さんがAといい感じだったからそうなのかな〜って」
「(完璧にそれじゃん‼)
…明石も勘弁してよ」
加州は頭を抱えた。
明石は勿論、三日月もAを気に入ってるから。と自問自答をして加州は香奈と溢れたお湯を拭き始めた。
「嫌な予感がする」
ーーーーー
骨喰はAが向かったであろう井戸に向かうが、そこには誰もいなかった。
冷やしてくると言っていたのに、と不思議に思いながら井戸に近付いた。
使った形跡はあるため、ここに来たのは間違いなかった。
「あれ、骨喰?」
「兄弟…」
「何してるの?
雪は?」
「今探してる」
「……骨喰、雪と何かあった?」
その答えに無言になっていると、鯰尾は骨喰の手を握った。
「なら謝りに行こう?
雪なら許してくれるよ」
「俺はただ……嫉妬しただけだ」
「?」
「雪は、俺達のものなのに…。
明石や三日月に無防備で……」
「そうだねぇ。
でも、明石さんや三日月さんでも雪の心は奪えないよ。
雪の心も身体も俺達のもので、俺達の心と身体も雪のもの。
3人で一つなんだから!
誰にも渡さないよ」
「兄弟…」
「俺も嫉妬ばかりだからさ」
骨喰は独占欲があるもんね。と鯰尾は骨喰の手を引きながらAを探すために本丸の中に入って行った。
「あ、薬研!
雪来なかった?」
「さっき来たぞ。
でも火傷に使う薬が切れてるって言ったらすぐに出て行っちまったんだ」
「火傷?」
「さっき審神者がうっかり熱湯をこぼしたんだ」
「……へぇ?」
「とっ兎に角!
すぐに戻ってくるんじゃないか⁈」
薬研から聞けば、Aは今剣と岩融を追って万屋に行ったと言う。
火傷の原因を聞いた鯰尾の声に、薬研は慌てて宥めるのだった。
ﾌﾞﾁｯ
(!)
(組紐が、切れた)
(雪…?)
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作者名：せーら | 作成日時：2021年4月18日 22時
