ろくじゅうきゅう。 ページ25
朝餉を終えたAは、戦闘服に着替えていた。
シャツとズボンを履いた後、片方の脚と袖に暗器を入れた。
そして、置いていた中指と小指が指抜きされている手袋を右手に着けた。
「雪〜もう着替えた〜?」
鯰尾が骨喰と一緒に部屋に入ってきた。
骨喰は朝餉の時に目がちゃんと覚めた為、自分で歩いている。
『もうすぐかな』
「雪が外に出るのは、久しぶりだな」
「前任のあの人は基本的に申請だったからね」
『腕鈍ってないか心配』
不安を口にするが、顔には出さずジャケットを着た。
『検非違使出なかったらいいな』
「まぁ保証はないな」
『あ、ありがと』
刀を繋げる組紐を受け取り結び終えたAは邪魔になった髪を後ろへ払った。
「場所は聞いたの?」
『和泉守さんが池田屋の市中って言ってた』
「夜戦か、雪の得意分野だね」
『はぁ、兄弟がいれば最高に頑張るのに……』
心底残念そうに肩を竦めると、鯰尾がAの頭を撫でた。
そして自分の本体を取る。
「A、準備は出来たかい?」
『いち兄!
うん、出来たよ』
「ネクタイが曲がっているよ。
……、よし」
『ありがと』
「さ、皆待っているから行きなさい」
『はーい!
兄弟行こ』
Aは鯰尾と骨喰の手を引いて行った。
ーーーーー
庭に着くと、既に揃っていた。
「あ、やっと来た」
『お待たせしましたー』
「一緒に出陣するのは久しぶりだな」
『長曽根さんとは久しぶりですね!
楽しみです!』
「揃ったなら出発するぞ」
「主さんは何か言ってた?」
「いや特には。
だが無茶はするなと聞いてる」
「まぁ無理するのは若干名いるからね」
『あははっ、何で見るんですか?』
和泉守が転送ボタンを押すと、地面が光り出した。
転送される寸前にAは振り返って、見送りをしてくれた鯰尾と骨喰、そして一期に手を振った。
(池田屋、市中……)
(いつも懐かしい響きだと感じる)
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作者名：せーら | 作成日時：2021年4月18日 22時
