ろくじゅうに。 ページ18
パンッ
パンッ
スカッ
『んきゃっ……とと』
「あーおしい」
『危なかった……えいっ』
「おぉっ⁈」
『あーおしい』
鯰尾とAは中庭で押し相撲をしていた。
お互い負けそうになるも踏ん張り続けている。
「(おっあれは鯰尾とAじゃないか!
…押し相撲しているのか。
よし驚かせてやろう‼)」
鯰尾とAが押すタイミングを図りながら話している陰から、鶴丸が悪戯な笑みを浮かべた。
「負けたら言うこと聞いてね」
『そっちこそ、余裕な顔してると負けちゃうy…「わっ‼」きゃあっ、わあっ』
「えっ⁉
うわあ⁈」
Aが押そうとした瞬間、鶴丸の驚かす声にバランスが崩れてしまい鯰尾を巻き込んで倒れ込んでしまった。
「よおお二人さん、驚いたか?」
『つ、鶴丸様…』
「いってぇ……っ、鶴丸さん何してるんですか」
「丁度君たちの姿が見えたんでな、つい」
『鶴丸様、さっき歌仙さんといち兄が怖い顔して探してましたよ』
「……さぁて、隠れる場所を探しくるか‼」
怒られる心当たりがあるのか、鶴丸はすぐに逃げていった。
Aは鯰尾の上から退いて、手を差し出して立たせた。
「はあ、ありがと」
『これって勝負入るの?』
「乱入者あったからなー」
『あ、血が出てる』
さっき転んだ時に擦りむいたのか、手の平に血が滲んでいた。
Aは手を取って傷口に唇を寄せた。
『ん』
「…」
鯰尾は身体の奥がｼﾞﾘ…と何かに火が付いたような感覚に陥った。
自分の流れている血を、Aの唇に擦り付けた。
『んんっ』
「あははっかわいー」
普段付けない紅をさしているように見え、Aに少し艶が増した。
『ずお?』
「んー?」
鯰尾はAの頬に手を添えてふにふにと遊んだ後、自分の血を付けた彼女の唇をぺろりと舐めた。
「紅付けてるみたいで良かった」
『血だけどね』
「鯰尾、A」
『あ、いち兄』
「さっき鶴丸殿来なかったかい?
こっちに走っていくのを見たんだが…」
「『あっち!』」
二人が指差すと、一期はありがとうと頭を撫でて鶴丸が去って行った方向へと歩いて行った。
「邪魔されたからもう一回やろっか」
『やる。
…あ、骨喰ー』
「内番終わったー?」
「ああ。
何かしていたのか?」
『押し相撲してたの。
3人でやろっか』
「一歩でも動いたら負けだよ」
「分かった」
(結局私負けちゃった…っ)
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作者名：せーら | 作成日時：2021年4月18日 22時
