検索窓
今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:19,494 hit

4 ページ4

「…おい」

「…ん?」

「起きろ。」

「あと少しだけ…」

はぁ、と、溜息が聞こえた気がした。

「この枕、温かいね。まるで姉上の膝みたいだ。」

「あんたの姉上ではないが、俺の膝だ。」

「え」

我に返った神室は飛び起きる。

「はっ!?あんた誰だ!?」

「散々人の膝で寝腐っておいて、ひどい言い草だな。」

神室の目の前には、少し日に焼けたような青年がいた。

「あんたの膝だったのか…妙に温かくて、優しかった…」

すると男は立ち上がり、目線を合わせた。

「俺は大倶利伽羅だ。相州伝の広光作で、元の主は伊達政宗。名前の由来は彫られた倶利伽羅龍。」

「え、作って何?主?彫られた倶利伽羅龍!?」

「あぁ。俺は相州伝の広光によって作られた刀剣だ。」

「と、とぅぉう、けぇん…んんん!?」

神室の思考回路はもう爆破寸前だ。

いくら考えてもおかしい。目の前にいる青年は、自分が刀だと言い張る。

「え、じゃぁその…ここはどこ?」

「俺も分からない。目が覚めたときにはここにいた。」


ここは真っ白な空間。ただ傍に、1本の桜の木があるだけ。

だが空気はとても綺麗だった。

「ど、どうやったらここから出られるのかな!?」

頭を抱え、激しく上下に揺さぶる。

冷や汗が止まらない。もう着物が汗まみれ…

「ってあれ?」

『そういえば、私って死んだんじゃなかったか…?』

神室は動きをとめた。

「あんた、人間か?」

「うん。その、はず。」

少し自信がなくなってきた。人間だよね?もしかしたらここ、極楽?

「少し我慢しろ。」

何かと思えば突然、大倶利伽羅が神室の着物を脱がせ始めた。

「おい!いくらサラシ巻いてるからってなぁ!」
「大人しくしてくれ。」

どうやら、いやらしいことをするわけではないようだ。

「おい」

「何でございましょう」

「アンタは人間じゃない。」

「はい?」

訳のわからない事ばかり言う大倶利伽羅。神室の中ではそう認識されていたが…

今回だけは、信用できた。

「ここに、“銘 宗近”と刻まれている。アンタは三条か?」

「えっ」

己の目で確かめると、確かに左側の鎖骨の下に“銘 宗近”と刻まれている。

「大倶利伽羅君、悪戯はいけません。」

「何を言ってるんだアンタは。」

「私の身体に落書きしただろ」

「馬鹿なのかあんたは。」

もう現実(仮?)から目を背けられなくなった神室は、白目を向くしかなかった。

5→←3



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (19 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
107人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

小枝(プロフ) - あーさん» ご愛読ありがとうございます^^* (2019年5月12日 15時) (レス) id: 8af81dc1b3 (このIDを非表示/違反報告)
あー(プロフ) - とても面白いです^^*。更新待ってます!頑張ってください!! (2018年6月6日 11時) (レス) id: 9daba1a21a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:小枝 | 作成日時:2017年8月4日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。