華と王冠【ym×in】(Kanadeさんリク) ※in+hk+cn先天性女体化注意。 ページ2
伊野尾side
「________おい、そこの不細工。」
映画の撮影現場。正確にはキャスト同士の初顔合わせで初めてその男を視界に捉えた時、精巧に作られた人形でも見ているのかと思った。
「……は？」
程良く鍛え上げられ綺麗に引き締まった身体。宝石でも埋め込まれたかのように大きな瞳。そして、まるで生気の感じられないその表情。他人の服に付いた塵の存在でも指摘するかのように、突然投げつけられた冒頭の台詞を聞いて、初めてそれが生きた人間だと分かった。
「私、ですか？」
「他にいないでしょ。あんたみたいなブス。」
自覚ないの？とでも言いたげに、目の前の男の顔が苦く歪む。普通だったら癪に触る筈のそんな表情ですら “美しい” という言葉でしか形容できないのだから、皆が挙って心を寄せる神という存在はつくづく不平等なのだと思う。
偉そうにも机に頬杖をついたまま鋭く私を見つめる彼の視線にとんでもない居心地の悪さを感じて、 このままさっさと退散してしまおうとも思ったが、到底そんな行動が許されるような雰囲気ではない。
「……山田さんは、お綺麗ですからね。」
「やめて、あんたに言われると気分悪いから。」
ご機嫌取りうざいんだよ、と眉を寄せた彼の重い貧乏揺すりに、こめかみがピキッと音を立てた。
山田涼介、23歳。
人気アイドルグループHey! Say!JUMPのメンバー。
“ ダイヤモンド ” と比喩される程に整った容姿と蕩けるような甘い声はデビューから数年経った今でも数多くの人を虜にし、年々活動の場を広げている。その毅然としたストイックさとモデルからアクション俳優まで幅広い仕事をこなす姿に『間違いなく芸能界の王冠は彼の物だ』と太鼓判を押す大御所もいるだとか。
当然私だって、そんな超人気若手アイドルとの共演オファーが来て一番初めに脳裏に浮かんだのは、某有名アイスクリームショップのCM。テレビの画面一杯にこれまた綺麗な笑顔を浮かべ、特徴的なミルキーボイスで宣伝をする姿はまさに天下のアイドルそのものだ。……薄らとだけれど私にこの仕事を持ってきたチーフの釈然としない態度の意味が分かった気がして、思わず溜息が零れた。
「……これじゃ、夢ぶち壊しだな。」
．
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作者名：ひまちぃ | 作成日時：2023年3月2日 23時
