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山田side
ゆっくりと、大きな音を立てない様に寝室へと足を踏み進める。
部屋の角にあるベッドへと近づいていくに連れ、だんだんと聞こえてくる可愛らしい寝息に、胸の奥がじんわりと歓喜に震えた。
「いの……お、ちゃん。」
ようやく見えた愛おしい彼の顔には無数の涙が乾いた跡がまだ残っていて、頬は酷く真っ赤に熱を持っている。
綺麗に通った鼻筋
長く均等に生え揃った睫毛
形が良く少し乾きのある唇
真っ白で陶器の様な肌
人形の如く美麗で壊れそうなその人が眠っているだけで、まるで一つの作品を鑑賞している様な感覚に陥いる。
______________嗚呼、好きだ。
もし俺が出会ったのが端整な容姿に産まれた彼じゃなかろうと、きっと俺はそれでもこうやって彼を美しいと言ったはず。
何故なら彼の本当の美しさは、彼が幸せだと微笑んだ先にあるものだから。
手触りの心地良い猫毛をくるりと指に絡ませて、改めて伊野尾ちゃんを泣かせてしまったことを心の底から悔やむ。
愛してる、愛してるんだよ。ごめんね、不安にさせて。
いくらそう訴えても、もう過去となったそれはやり直しようがない。
その事実を分かっていながらも、俺の瞳はふるりと揺れた。
「……や、ま……ちゃん……？ 」
その時だった。
突如頭に流れ込んできたのは、今一番抱き締めたくて仕方なかったその人の声で。
勢い良く押し寄せた感情に、俺の顔はぐしゃりと歪む。
全てがどうでも良くなった。謝る流れとか、そのあと抱き締めてとか、彼に誠意を見せられる様に細かく書いた頭の計画書は、今この瞬間、目の前の最愛に粉々に破り去られたのだ。
「っっ、いのお、ちゃん……！！！」
ぼろぼろと瞼から大粒の涙が弾き落とされる。
それは俺の顔を覗き込んだ伊野尾ちゃんの頬を濡らして、質の良いベッドシーツへと吸い込まれていった。
「やまちゃん……」
殴ってほしい。俺のこと。
こんな馬鹿みたいなことした俺のこと、いくら殴っても、罵ってもいいから。
どうか、どうか『別れたい』なんて言わないで。
「……ご、はん、ちゃんと、たべた……？」
するり、
頬を伝い落ちた涙を拭ったのは
紛れもない彼の華奢な指先。
それと同時に投げ掛けられた
ただただ優しく温かい言葉は、
俺の心を強く揺さぶった。
「……ま、だ。」
「……ちゃんとたべなきゃ、あしたも、お仕事でしょ…………あんまり、すきじゃ、なかった？」
こんなにも思いやりに溢れた愛する人を前にしても、格好がつくような上手い言葉なんか出てきてくれない。
でも、それ以上に、今俺が伝えたいのは……
「伊野尾ちゃんと、2人で食べたい。……だから、一緒に帰ろう」
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ひまちぃ(プロフ) - うさこさん» うさこさんありがとうございます！！コメントすごく嬉しいです😆次回作も力を入れて頑張りたいと思います！！ (2022年7月13日 19時) (
レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - こんばんわ。やっと仲直り😊いのちゃんの気持ちを思うと泣けてきちゃってずっと気になっていたのでハッピーエンドになって嬉しいです🙂次の作品も楽しみにしています。 (2022年7月13日 1時) (レス) @page49 id: f4957992c9 (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - Rinさん» ありがとうございます！！コメント本当に嬉しいです！！最近は更新頻度も落ちてきてご迷惑をおかけしていることは承知ですが、気長にお待ちいただけると幸いです。 (2022年7月8日 21時) (レス) @page45 id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
Rin - このシリーズすっごくすっごく好きです！！この後の展開が気になって仕方ない書き方をされるのでワクワクが止まりません！早く続きが読みたいです！待ってます！！ (2022年6月30日 19時) (レス) @page44 id: b5ace0fd89 (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - ぬんさん» コメントありがとうございます！！すっごく嬉しい感想で、静かに喜びを噛み締めてます……！！これからもどうかご愛読ください！！ (2022年6月19日 19時) (レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひまちぃ | 作成日時：2022年3月9日 12時
