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伊野尾side
熱を浮かされた頭の奥で小さく誰かの話し声が聞こえて、うっすらと重たい瞼を持ち上げる。
眩しい照明の光が瞳に飛び込んでくるのと同時に見慣れたシルエットを視界の端に捉え、名前を呼ぼうと口を動かしては見るものの声としてそれが響くことはなかった。
「あ、待って……いのちゃんが、」
「伊野尾……！！」
暫くなにかを話し込む2人を見つめていると俺から送られる視線に気づいたらしい光が、そっと横の男の袖口を引き、俺の方を指し示す。
すると、耳馴染みのあるトーンで俺の名前を呼びながら、ベッドに小走りで駆け寄ってくる男……薮は、不安とか心配とかがごちゃ混ぜになった感情を深くその端正な顔に滲ませて、俺を覗き込んだ。
「まだ顔色悪いな。体は辛いか？」
「……、ん 」
「うまく喋れないなら無理しないでいい。大丈夫。」
薮の節張った冷たい手のひらが俺の頬をそっと包み込む。
熱を持った肌には彼の体温がひんやりと心地良い。
薮と光、2人の眼差しだけが優しく俺の元へと降り注ぎ、彼らから惜しみなく与えられるぬくもりの中でただ穏やかに過ぎる時間は、俺の心の痛みをゆっくりと和らげていった。
「なんか飲むか？さっき色々買ってきたから。」
普段はこれでもかってほど俺に対して厳しい癖に、俺が弱ってしまった時の薮は極端に優しい。
へばる俺の世話を甲斐甲斐しく焼いてくれるし、以前、精神的に参ってしまった時も何も言わずに側に居てくれた。
「ぉ、れ 」
「ん？」
ほんの少し手を伸ばせば触れる位置。
柔らかな目線が俺を受け容れる。
「や、ぶが……ょかったぁ……っ……、」
ぽろぽろと溢れ出した涙は止まらなくて、ツン……と痛んだ鼻の先に熱が篭った。
腫れた瞼は余計に重く俺の瞳○○しかかり、頭に浮かんだままの拙い言葉だけが、流れるように口から滑り落ちる。
「ぅう……っあ、ゃぶが、……やぶがいい……っ……、！」
頬に当てられたその手を掴んでそう口を動かせば、次の瞬間、俺の体は薮の腕の中にあった。
「……分かった。伊野尾、もう大丈夫だから。」
ああ、この優しさが、温かさが
俺が愛した彼のものだったら
どんなに良かったのだろうと。
「っもぉ、やだぁ、あ……ぁっ……！」
もう山田のいないリビングで、1人膝を抱えるのは嫌だ。
隣に彼のいない朝を迎えたくない。
聞き分けのいいパートナーを演じるのには疲れてしまった。
愛しい人の言葉で、もう胸を焼きたくないから。
.
「光、伊野尾を頼んだ。
________俺ちょっと用事できたわ。」
「……ほどほどにな。」
．
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ひまちぃ(プロフ) - うさこさん» うさこさんありがとうございます！！コメントすごく嬉しいです😆次回作も力を入れて頑張りたいと思います！！ (2022年7月13日 19時) (
レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - こんばんわ。やっと仲直り😊いのちゃんの気持ちを思うと泣けてきちゃってずっと気になっていたのでハッピーエンドになって嬉しいです🙂次の作品も楽しみにしています。 (2022年7月13日 1時) (レス) @page49 id: f4957992c9 (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - Rinさん» ありがとうございます！！コメント本当に嬉しいです！！最近は更新頻度も落ちてきてご迷惑をおかけしていることは承知ですが、気長にお待ちいただけると幸いです。 (2022年7月8日 21時) (レス) @page45 id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
Rin - このシリーズすっごくすっごく好きです！！この後の展開が気になって仕方ない書き方をされるのでワクワクが止まりません！早く続きが読みたいです！待ってます！！ (2022年6月30日 19時) (レス) @page44 id: b5ace0fd89 (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - ぬんさん» コメントありがとうございます！！すっごく嬉しい感想で、静かに喜びを噛み締めてます……！！これからもどうかご愛読ください！！ (2022年6月19日 19時) (レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひまちぃ | 作成日時：2022年3月9日 12時
