2 ページ29
薮side
「無理させたか？」
「いや、いいって。俺も溜まってたし。」
仕方ないでしょ、と前置きしながら
俺の、傍から見たら暴力的かもしれない行為を
会話の節々でさり気無く擁護してくれる所に、
彼の気丈さや優しさを感じさせられる。
しかし、そうとは言いながらも
俺が思っているよりよほど疲弊していたのか、
未だペットボトルを手放せず、
少しずつこくこくと喉を鳴らす伊野尾。
以前にもこの光景を見たことがあるが、
一気に喉へ水を流すと、傷が染みて
翌日の喉の痛みが増すのだとか。
「喉、やっぱ痛いよな。」
「……まぁ、それはね。」
あれだけ声を上げて大泣きしていたら
そりゃ喉も傷つくし、声も枯れるだろう。
全ての元凶を俺なのだけれど。
やはりじくじくと胸を焼いたのは
果てしない程の罪悪感で。
それでもそれを言葉にしたりするのは
伊野尾が余り好ましく思わないから、
この気持ちが少しでも彼に伝わればいいと
手触りのいい頬を指先で撫でた。
擽ってぇよ、と目を細めながらも
伊野尾がそれを決して拒む事は無いし
なんなら無意識のうちに、
自分からすり寄ってきている事に
まだ気が付いていないところも可愛らしい。
「……ん、」
ふと、なにか違和感を誤魔化すように
もぞもぞと小さく動き出した彼。
「薮、ごめん。シャワー行きたい。」
「ぇ、ああ……なんかいつもより早いな。」
軈て、そんな我慢もきかなくなったのか、
断りを入れながら俺の腕を退けた伊野尾は
俺が疑問を口にすると、ちょっとだけ躊躇いながらも
諦めた様に大きなため息を吐いて、問いかけてきた。
「……お前、今日自分が何発出したか分かってる？」
「……ぅ、ん？よん……かいくらい？」
「馬鹿言え。6発だよ。絶倫が。」
それ以上は伊野尾も何も言わないが、
多分俺が中に出したものの後処理に行きたいのだろう。
しかも、いつもより行く時間が早いという事は、
もう腹が痛くなってきたか。
「伊野尾、ちょっとこっち。」
「なに、……んぇ、ちょっ！！うわぁ……！！」
壁に手をついて、震える足で立とうとした彼の腕を引き
そのままお姫様抱っこの要領で繊弱な体を抱え上げる。
俺も流石に自分の所為でかなり無理をした恋人に
風呂までの道を歩かせる程鬼畜では無い。
「下ろせって……っ！！」
怖いのか、恥ずかしいのか
バタバタと脚を動かしながら
精一杯の抵抗を見せてくる伊野尾が
なんだか余計に愛らしく見えて、
そっとその額にキスを落とした。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 349人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひまちぃ(プロフ) - うさこさん» うさこさんありがとうございます！！コメントすごく嬉しいです😆次回作も力を入れて頑張りたいと思います！！ (2022年7月13日 19時) (
レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - こんばんわ。やっと仲直り😊いのちゃんの気持ちを思うと泣けてきちゃってずっと気になっていたのでハッピーエンドになって嬉しいです🙂次の作品も楽しみにしています。 (2022年7月13日 1時) (レス) @page49 id: f4957992c9 (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - Rinさん» ありがとうございます！！コメント本当に嬉しいです！！最近は更新頻度も落ちてきてご迷惑をおかけしていることは承知ですが、気長にお待ちいただけると幸いです。 (2022年7月8日 21時) (レス) @page45 id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
Rin - このシリーズすっごくすっごく好きです！！この後の展開が気になって仕方ない書き方をされるのでワクワクが止まりません！早く続きが読みたいです！待ってます！！ (2022年6月30日 19時) (レス) @page44 id: b5ace0fd89 (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - ぬんさん» コメントありがとうございます！！すっごく嬉しい感想で、静かに喜びを噛み締めてます……！！これからもどうかご愛読ください！！ (2022年6月19日 19時) (レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひまちぃ | 作成日時：2022年3月9日 12時
