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伊野尾side
ひゅ、と変な吸入音を立てた喉が熱を持つ。
ふらついた足元を何とか持ち直し、そのまま、余計なものを視界に入れまいと滲んだ天井を見上げる。
どくどくと痛い鼓動を打ち鳴らす心臓を納める様に、血が逆流していく様な奇怪な感覚を消し去る様に、広がる空虚を見上げたまま、忌々しい両目を塞いだ。
は、と１つ息を吐き出して、今度は酸素を取り入れて。
気休めのそれ繰り返しているうちに、自分の喉元が激しい熱を持って段々と唇が震えてくるのが分かる。
……待て、だめだ。耐えろ。
あの子は、ゆうとは、
「……中島さんは、運悪くも岩肌が露呈している場所に落下されたと見られ、その関係で御遺体の回収が難航してしまいまして……皆様へのご対面が通常より遅くなってしまいました。本当に申しわ、」
「……ッッも、ういいです……！！」
そんな事、聞きたくない。
ああ、違うんだよ。ゆうと。
俺はずっと、ずっと
「ぉ、まえが……、かえってくるって……ッッ
___________ずっと、信じてた……っ……！！」
その作り物の様な手を握り締めたまま、冷た過ぎる床に崩れ落ちる身体。
少しだけ俺の頬に触れたその指先は、まるで彼が俺を慰める時の感覚、そのままだ。
悔しかった。今まで感じた事もないくらい。
俺が認めてしまったら、哀しんでしまったら、あの子を待つ人は誰もいなくなってしまうから。
せめて俺だけは、あの子の死を認めてなんかやりたくない。俺だけはいつかあの子が笑って帰ってくる日を待ちたい。
そしたら、……そしたらさ。
愛おしむ様に『おかえり』って囁いて
もう一度そのミント味の唇にキスをして
彼の大きくて逞しやかな身体に抱かれて
“ ________いのちゃんに、俺のパートナーになって欲しい ”
もう一度紡がれるであろう言葉に大きく頷くんだ。
お互いの手を握りながら、額を合わせて。
2人で、ふたりで幸せになろうって。
今度こそ、
“ 今度 ” 、こそ
「……ぅっあ、ああ、ぁあ……ぁ……ッ……、」
もう、俺たちの関係に明日など無い。
彼が隣にいる今度なんて、もう二度と来ない。
その事実を、今この瞬間________＿＿。
……俺が認めてしまった所為で、この心で彼だと確信してしまった所為で、もうあの子は、ここへは帰れない。
“ 愛してる ”
いつかの彼の口から紡がれた言葉に縋る様に、何度も何度も繰り返し唱え続けた言葉は、誰に拾われる事もなく、溶けて消えていく。
______________9月某日、
その日からゆうとの『ただいま』が聴けなくなった。
．
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ひまちぃ(プロフ) - うさこさん» うさこさんありがとうございます！！コメントすごく嬉しいです😆次回作も力を入れて頑張りたいと思います！！ (2022年7月13日 19時) (
レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - こんばんわ。やっと仲直り😊いのちゃんの気持ちを思うと泣けてきちゃってずっと気になっていたのでハッピーエンドになって嬉しいです🙂次の作品も楽しみにしています。 (2022年7月13日 1時) (レス) @page49 id: f4957992c9 (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - Rinさん» ありがとうございます！！コメント本当に嬉しいです！！最近は更新頻度も落ちてきてご迷惑をおかけしていることは承知ですが、気長にお待ちいただけると幸いです。 (2022年7月8日 21時) (レス) @page45 id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
Rin - このシリーズすっごくすっごく好きです！！この後の展開が気になって仕方ない書き方をされるのでワクワクが止まりません！早く続きが読みたいです！待ってます！！ (2022年6月30日 19時) (レス) @page44 id: b5ace0fd89 (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - ぬんさん» コメントありがとうございます！！すっごく嬉しい感想で、静かに喜びを噛み締めてます……！！これからもどうかご愛読ください！！ (2022年6月19日 19時) (レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひまちぃ | 作成日時：2022年3月9日 12時
