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伊野尾side
一瞬、切羽詰まった絶望感の向こうで、殺意にも似た感情が薮の中を吹き抜けたのが、目に見えて、よく分かった。
俺の頭上に力一杯振り上げられた彼の拳には、自分で握り締めた所為もあるのか血が滲んでいる。
薮は本気だ。このままガツンと殴られたら、本当に死んじゃえたりしないか。
「……だったら、いいなぁ」
ぼんやりと動きの鈍い脳味噌にゆうとの屈託のない笑顔を想い浮かべながら、その場の雰囲気に流れる様に、そっと目を伏せた。
「……ッおい、薮。お前ふざけてんのか。今そんな時じゃねぇだろ……！！！！」
力一杯殴られる衝撃の代わりに降ってきたのは、語気に強く怒りを滲ませた光の声。
まさかの状況に何事かと薄っすら目を開けると、薮の拳を手で受け止めている彼の顔が見える。
「だって、そいつは……っ！」
横たわっている俺にぐいと詰め寄ろうとする薮を、光が鋭く睨んで、彼の動きを手で制した。
酷く悲しそうな……悔しそうな顔をした薮だったが、一つ深呼吸をすると『悪かった』と小さく呟いて、素直に光の言葉に従った。
すると、先程よりも優しげに細められた光の瞳が今度はくるりと俺の方を向いて、その視線が静かに俺を咎める。
「いのちゃんも、考えて発言して。辛いのも、苦しいのも皆一緒」
小さい子に言い聞かせるかの如く、ゆっくりと言葉が紡がれるのと同時に、ぽん、と頭の上に光の柔らかい手が乗せられた。
途端、急に自分の存在が惨めに見えてきて。心臓がドクリと音を立てた。
分かってた。メンバーは何も悪くない。
俺が勝手に、まるでゆうとの感情も巻き込んだみたいに怒って。いつもいつも、本当に馬鹿なのは俺の方じゃないか。
「い、のちゃん？」
「……ごめん、なさ、」
「え、……」
「やぶも、ごめん……、ひかるも本当にごめん。みんなも、っあぁ……、ごめんなさい……ちがうの、おれ、ゆうとが……ゆうと、がいないと……、ッ、ぁあぁ……あ゛ぁ……ッ！！」
「っ、おい、伊野尾！！」
頭の中がぐるぐるしてきて、だんだんと、大好きだったゆうとの笑顔でさえも、その真ん中が焼け焦げたみたいに思い出せない。
視界も、意識も全てが『？』の文字で埋まっていく感覚が異様に気持ち悪くて、肌がぶわっと総毛立った。
「落ち着け！！」
光が俺の肩をぐらぐらと揺さぶる。
その瞬間頭の中身ごと急に浮いたみたいな感覚に陥って、徐々にホワイトアウトしていく視界に抗うこともなく、俺はそっと意識を手放した。
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ひまちぃ(プロフ) - うさこさん» うさこさんありがとうございます！！コメントすごく嬉しいです😆次回作も力を入れて頑張りたいと思います！！ (2022年7月13日 19時) (
レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - こんばんわ。やっと仲直り😊いのちゃんの気持ちを思うと泣けてきちゃってずっと気になっていたのでハッピーエンドになって嬉しいです🙂次の作品も楽しみにしています。 (2022年7月13日 1時) (レス) @page49 id: f4957992c9 (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - Rinさん» ありがとうございます！！コメント本当に嬉しいです！！最近は更新頻度も落ちてきてご迷惑をおかけしていることは承知ですが、気長にお待ちいただけると幸いです。 (2022年7月8日 21時) (レス) @page45 id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
Rin - このシリーズすっごくすっごく好きです！！この後の展開が気になって仕方ない書き方をされるのでワクワクが止まりません！早く続きが読みたいです！待ってます！！ (2022年6月30日 19時) (レス) @page44 id: b5ace0fd89 (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - ぬんさん» コメントありがとうございます！！すっごく嬉しい感想で、静かに喜びを噛み締めてます……！！これからもどうかご愛読ください！！ (2022年6月19日 19時) (レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひまちぃ | 作成日時：2022年3月9日 12時
