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伊野尾side
早朝、カーテンから差し込む光で目が覚めた。
横を見れば、ベッド脇に座って俺の手を握りながら寝息を立てる千葉くん。
艶々とした髪が朝日に照らされて、鮮やかな紫光の黒を強める。
ぎゅ、と握られる手は離さないとでも言う様に俺の指まで絡め取っていて、その手の温もりを惜しむ様に、何度も何度も手の甲を撫でた。
「……ありがとう、千葉くん。」
年の割には幼くあどけない寝顔にそう囁いて
少しだけ握る力が弱くなった手を退かした瞬間、気が付いてしまった。
彼の顔と自分の手を交互に見比べ、軈てぎゅっと拳を握る。
「……本当、馬鹿な人。」
とても年上とは思えない程我儘で、口が悪くて
それでもいざという時は凄く優しくて、大人の余裕があった。
そんな貴方の存在が、俺にとってどれだけ助けになったのか。
貴方は、これから先知る由もないだろうね。
近くにあったフカフカのブランケットを手に取って、ふわりと彼の肩にかける。
もぞりと身じろぎした千葉くんの背中をゆっくりと摩って、『どうか今はまだ目を覚まさないで』と心から願った。
柔らかいベッドの上から、冷たいフローリングに足をつけた時はその温度差に思わず身震いしてしまったけど、
____________『伊野尾ちゃんは寒がりなんだから、靴下履いてないとダメだよ。』
こんな想いとも、今日でおさらば。
脳内で再生されたいつかの会話に耳を背ける様に、何度か頭を横に振った。
いつも以上に時間をかけて、ベランダへと向かう。
ベランダの扉を開けると、ひんやりとした心地いい風が吹き込んできて、なんだか本当に全てがどうでもよくなった。
空を見上げれば、消え遅れた星がまだ何個か瞬いていて、それを追い出す様に乳白色の夜明けが闇を溶かし始める。まるで、対となるはずの朝と夜が同時に存在しているみたいだ。
そんな酷く幻想的な空間に、俺は長い時間目を奪われていた。
どれぐらいそうしていただろうか。
気づいた時にはもう夜など殆ど、裏側に逃げてしまっていて、半分程顔を出した太陽が、眩いほどの光を放ち、人々が眠りに着くこの街を、黄色味がかった白色に染め上げていく。
その光から逃げる様に、ベランダから慌てて家の中に逃げてしまった俺も、もしかしたらその夜の一部だったのかもしれない、なんて……俺も妄想癖がいつまで経っても無くならないものだ。
「準備を、しようか。」
俺もそろそろ、潮時なのだから。
次の朝が始まるまでに、溶けてしまえる様に。
．
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ぽぽ - 何回も何回も読んでは泣いてを繰り返しています。最終話まで必ず待ち続けます！ (2023年4月2日 14時) (
レス) @page22 id: 2356846dec (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - ぬんさん» コメントありがとうございます！！内容自体も模索しながらの執筆となりますが、これからも楽しみにしてもらえると幸いです💓 (2022年9月13日 6時) (レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
ぬん(プロフ) - 何回読み直してもめっちゃ泣けるほど好きです😭結末がどうなるのかめっちゃ気になってしょうがないです！！ひまちぃ様の作品全部毎回読み返すくらい書き方が好きです！最終話まで待ち続けます👮 (2022年9月13日 0時) (レス) id: 9851ed22ed (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - mojyabucchantさん» コメントありがとうございます！！こんな超超超亀更新作品をそんな風におっしゃっていただいて嬉しい限りです！！なるべく更新続けていけるように頑張っていきます！！ (2022年9月7日 21時) (レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - ふぅいさん» 返信非常に遅くなってしまい申し訳ありませんでした。コメントありがとうございます！！一文字一文字何度も読み返して嬉しさに感じ入っております……。ふぅいさんのお言葉に私もモチベを刺激されながらこれからも精進して参ります！ (2022年9月7日 21時) (レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひまちぃ x他1人 | 作成日時：2021年8月11日 22時
