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千葉side
目の前で顔を覆いながら笑う、彼の綺麗な指の隙間から一滴、また一滴と雫が零れ落ち、テーブルの上でも尚、その形を保っていた。
角砂糖を加えたことで更に甘ったるくなった紅茶を口にしている筈なのに、何故かその様子を見ていると、舌が塩味を認識して口の中で過敏に震える。
「ふ、……っく……、」
嗚呼、いっそのことあんな男のことなんか捨てて俺の胸に飛び込んで来てくれれば良いのに。
そんな事を思ったところで、きっと彼の心は俺に傾いてはくれないのだけれど。
「……山田くん、謝ってたよ。顔に傷つけてごめんって。」
「……はは、ばっかじゃないの……。」
「だから、悪いと思ってんならお前の紅茶の作り方教えろって。」
「……ちばくん、頭悪いでしょ？」
顔はずっと覆ったままだが、今度はちゃんと笑ってくれているらしい。
彼のご機嫌が治ったのを見て、少しばかり意地悪してやることにした。
机から身を乗り出して、いのちゃんの肩をそっと掴む。へへ、と肩を揺らしながら笑っていた彼も、それにはびくりと肩を震わせ俺を見た。
「俺じゃダメなの？」
ようやく降ろされた手の奥にあった、痛々しく真っ赤に腫れた目に、ツキリと胸が痛んだ気がしたけど多分気の所為だろう。
彼は驚く様子も慌てる様子もなく、俺をずっと見つめている。
「俺はいのちゃんの事、絶対に泣かせない。」
それでも、俺じゃダメ？
彼奴じゃなきゃダメなの？
冗談とは言えど、人生でもかなり数少ない自分からの告白は、やはり心臓の動きを早まらせ、喉の奥が熱を持った。
……何となく、彼の返事は予想がついていた。
「ごめんね、千葉くん。俺、山田じゃないとダメみたい。」
優しく、肩に置かれた俺の手を撫でる様に握る。
ふわりと微笑んだいのちゃんは、この間までの苦しそうな笑顔じゃなく、昔からのくしゃりとした笑顔で
何故か、
「でも、叶いそうにないの。」
分からないけど、
「千葉くん、」
心が、痛いぐらいに締め付けられて
「みんなの事、よろしくね。」
最後の言葉を掻き消す様に、手荒く彼の華奢な体を胸の中に納めた。
嗚呼、願わくば此処にずっと居て欲しい。
「いのちゃん、やだ。」
「……ごめんね。」
俺より年下のくせして、
こういう所はまるで年上みたいに振る舞うんだ。
精一杯の抵抗で、彼の骨が折れてしまうくらい強く抱き締めたけど、本当は彼を止める権利なんて、俺には無い。
……そんな事、分かりきってた。
．
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ぽぽ - 何回も何回も読んでは泣いてを繰り返しています。最終話まで必ず待ち続けます！ (2023年4月2日 14時) (
レス) @page22 id: 2356846dec (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - ぬんさん» コメントありがとうございます！！内容自体も模索しながらの執筆となりますが、これからも楽しみにしてもらえると幸いです💓 (2022年9月13日 6時) (レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
ぬん(プロフ) - 何回読み直してもめっちゃ泣けるほど好きです😭結末がどうなるのかめっちゃ気になってしょうがないです！！ひまちぃ様の作品全部毎回読み返すくらい書き方が好きです！最終話まで待ち続けます👮 (2022年9月13日 0時) (レス) id: 9851ed22ed (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - mojyabucchantさん» コメントありがとうございます！！こんな超超超亀更新作品をそんな風におっしゃっていただいて嬉しい限りです！！なるべく更新続けていけるように頑張っていきます！！ (2022年9月7日 21時) (レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - ふぅいさん» 返信非常に遅くなってしまい申し訳ありませんでした。コメントありがとうございます！！一文字一文字何度も読み返して嬉しさに感じ入っております……。ふぅいさんのお言葉に私もモチベを刺激されながらこれからも精進して参ります！ (2022年9月7日 21時) (レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひまちぃ x他1人 | 作成日時：2021年8月11日 22時
