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伊野尾side
「で、なんで来たの？」
「んー？いのちゃんが元気なさそうだなぁって思って。」
リビングのダイニングテーブルに二人分の紅茶のカップをコト、と置く。
甘く、甘ったるく、強烈なハッカの匂いの篭った飲み物は、散々彼奴の美味い紅茶を飲んできた俺にとって、何処か薄味に思えた。
「うん、美味しい。……いのちゃんも、紅茶淹れれるようになったんだ。」
「……千葉くんこそ、いつの間にそんなに演技下手になったの？」
ティーカップをゆっくりと持ち上げて、中心から徐々に広がっていく波紋に視線を落とす。
薄く視野に入る目の前の彼は、カップ越しでも狼狽えている様には見えなかった。
「……その合鍵、山田から渡されたんでしょう？」
千葉くんから言ってくれればいいものを、わざわざ俺に言わせるのだから、彼もかなり性根が腐っているなぁ、と口元が緩む。
そんな俺を見て、何度か瞬きをした後『ふふ』と機嫌が良さそうに笑う千葉くん。
「よく分かったね。」
「分かるよ。……そうだね、そういう子だもん。やまちゃん。」
「……随分と余裕だね。」
「ふふ、そう見えるでしょ。」
「…………もう、分かってるよ。ごめんね、ちょっと意地悪した。」
彼が何を思って俺に謝っているのか、全く見当もつかない。ただ、そんな呆れた様な謝罪にも俺はちゃんと笑ってあげたつもりだ。
「いのちゃんは、余裕に見えるんだよ。」
「そう？」
「もっと泣き喚いてさ、もっとしっかり違うって、否定す、れば……っ 」
「あーもう、泣かないで。ごめんね。うん、うん。」
「いのちゃ、はさ……なんっで……受け入れちゃう、の。」
ぼろっとその大きな瞳から零れ落ちた雫が、紅茶の中に一滴落ちた。また紅茶の湖が波紋を立てて、美しく静かな円がコップの縁に渋滞する。
「……千葉くん、俺みたいなのが “可愛げがない” って言うのかな。」
「……そぅ、なんじゃない……？」
「はは、やっぱし？」
「もっと縋り付いて……もっと弁解して……もっと、もっと出来ることが、」
「千葉くん、俺ね。受け入れたんじゃないの。悲しかったの。」
「……。」
「信じてくれなかったのが、本当に……悲しかったんだよ。」
「いのちゃん、」
「俺の初めては山田で、それ以来山田以外に身体開いてない。……可愛げなくたって、そのくらいの純情は……持ち合わせてたんだけどね。」
あれ以来伏せてある写真たてに目を移しても、
涙は、出てこなかった。
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ぽぽ - 何回も何回も読んでは泣いてを繰り返しています。最終話まで必ず待ち続けます！ (2023年4月2日 14時) (
レス) @page22 id: 2356846dec (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - ぬんさん» コメントありがとうございます！！内容自体も模索しながらの執筆となりますが、これからも楽しみにしてもらえると幸いです💓 (2022年9月13日 6時) (レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
ぬん(プロフ) - 何回読み直してもめっちゃ泣けるほど好きです😭結末がどうなるのかめっちゃ気になってしょうがないです！！ひまちぃ様の作品全部毎回読み返すくらい書き方が好きです！最終話まで待ち続けます👮 (2022年9月13日 0時) (レス) id: 9851ed22ed (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - mojyabucchantさん» コメントありがとうございます！！こんな超超超亀更新作品をそんな風におっしゃっていただいて嬉しい限りです！！なるべく更新続けていけるように頑張っていきます！！ (2022年9月7日 21時) (レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
ひまちぃ(プロフ) - ふぅいさん» 返信非常に遅くなってしまい申し訳ありませんでした。コメントありがとうございます！！一文字一文字何度も読み返して嬉しさに感じ入っております……。ふぅいさんのお言葉に私もモチベを刺激されながらこれからも精進して参ります！ (2022年9月7日 21時) (レス) id: aaba219193 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひまちぃ x他1人 | 作成日時：2021年8月11日 22時
