ポジションが悪役令嬢だなんて聞いてません！

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え、深澤辰哉って婚約者いたの？？？？



初耳なんですけど、公式ゲームサイトにも攻略本にも書いてなかったと思う。突然の新情報にオタクびっくりです、えっ、ほんとうに？ 嘘ついてるとかじゃないよね？ まって理解が追いつかない。


東「そ、その」
「は、はいっ！」


いろいろと考えすぎて突然の呼びかけに上擦った声が出てしまう。


東「もしよかったら後日お礼をさせてください」
「え、そんな」
東「お願いします」


ぎゅっと手を握られる。

そんな感謝されたいがためにした事じゃないから別にいいんだけど、沢山断るのも失礼かな。それに女の子の知り合いって居なかったしコソコソ言われていたから評判も悪いみたいでこれから同性の知り合いを作るのは諦めていたけど……。


「……ありがとうございます、じゃあお言葉に甘えてお邪魔させていただきます」
東「っ！ はい！」
深「よかったね〜」
東「深澤様も着いてきて下さってありがとうございます」


にこやかに話す2人は意識してみれば婚約者のような距離感にもみえる。


婚約者がいたってことはゲーム内でそういうイベントがあっても良かったと思うのに一切なかった。あの時もう既に婚約破棄をしていた可能性もあるけどそういった匂わせもなかった気がする。

ゲームが始まった時点で婚約破棄してなかったら場合深澤辰哉ルートで描写されていなかった理由は何……？ 気になりすぎてもう1回深澤辰哉ルートをプレイしたい。


東「ではまた後日に連絡いたします」
「はい、お待ちしております」


ぺこり、とお辞儀して2人はその場を去っていく。


深「あ、そうだ忘れてた、ちょっとまってて」
東「？ はい」

「じゃあ今度こそ帰りましょっ……わっ」
目「は……！？」


蓮くんの方に向き直ろうとした瞬間にグイッと腰を引かれて体のバランスを崩す。驚いている蓮くんが視界から外れて目線を上にむければ。


「ふ、深澤様」
深「……」


深澤様が顎をぐいっと持ち上げてじっと私を見つめてくる。片手はまだ腰を抱いたまま。そのまま、私の目元をさらりと撫でながらにこやかに微笑み耳元に口を近づけてきて。


「えっと……」
深「……目、赤くなってるから後で冷やしなよ」
「！」


ぱっと手が離れてそれじゃあと今度は本当に去っていってしまったがそれどころじゃない。



まって、なんで泣いてたこと知ってるの？



「こわい、深澤辰哉こわい」

目「……やっぱり一緒にいたら良かった」

作者より【追記】→←◇

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