白昼夢の羊 (ページ4)

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男の人から目が離せないでいると、ズカズカと近付いてくる

よく見ると、その手には血がベッタリ付いたナイフが握られていて…生臭い鉄の匂いが一気に充満した。

この状況に恐怖を覚えて逃げ場なんてないのに壁に背中を限界まで寄せるけど、あっという間に目の前まで来る

すると男は私の前でしゃがみ、目を合わせた

『ねえ、』

「は、はい…」

『誰にやられてんの、これ』

「へ…？っ、いたっ、い」

男は私と目線の高さを合わせるなり、私の腕をギュッと掴む

その手がアザに当たって思わず顔を歪めると、掴む力が弱くなるから不思議で顔を上げた

何も言わない私に何かを悟った男はポケットから何かを取り出し、私の目の前に出してみせた。これは…鍵？

『俺と一緒に来る？』

「へ…？」

『助けてあげよっか、君のこと』

しゃがんだ膝の上で頬杖をついて口角を上げるから、よくわからなくて首を傾げると今度は私にもわかりやすい言葉を発した

助けてあげると言われ、手を差し伸べられて、今目の前に希望がある。

嘘でも良い、捨てられたって良い、この場所から救い出してくれるなら…私はどんな悪魔にだってついていこう

「…助けて、ください」

震える声で、なんとか言葉を絞り出せば男が私の手を引っ張った

勢いよく男の胸に飛び込めば、私の手足に付いた鎖を鍵で外していく

静寂に包まれた室内に、鎖が落ちる音がやけに響く。自由になった手足がこんなにも身軽だなんて知らなかった