話が違うな！ ページ18
全ては自身の記憶の始まりである"彼の人"を見つけるために。
ハク) 良いだろう。また少し、様子を見させてもらうことにしよう。
生き抜いて見せろAよ。
そう言ったAの親友の姿はみるみる眩い光と変わり、やがてその光がAの全身を包んだ。
そこでまた、Aの意識は飛んだ。
A) ...ん。
Aが目を開けるとそこにはまた殺風景な天井が広がっていた。
A) (戻れなかったのか...？)
Aは不安を覚え周りを見渡した。するとそこには見覚えのある黒髪、イルミの姿があった。丁度ドアを開けたところのようでその場に立ち尽くしていた。
そして、つかつかとAに近づいてくる。
イル) 馬鹿じゃないの。
ｷﾞｭｯ
そう、Aを強く抱きしめて言った。その声には大きな安堵と少しの怒りが含まれていた。
Aは、久しぶりの自分以外の体温の心地良さに、自然と身を任せていた。
＿＿＿＿
キキョウ) さぁさぁAさん、沢山食べて！
今日は腕によりをかけて作った特製ディナーなの！！
Aは目を覚まし、イルミにしこたま怒られてからやっと、約2週間ぶりの食事にありついていた。
Aは、キキョウに返事する間も勿体ないかのようにひたすら胃に食べ物を供給していた。
その食べる量は留まるところを知らず、Aとキキョウ以外は少し引き気味になる光景だった。
A) ｺﾞｸｺﾞｸ、フゥ。
...美味いな！美味い！
Aはやっと食卓に来てからの第一声を発した。
と、同時に周りを見渡す。高く積み上げられた皿に我ながら感心する。そして、共に食卓についている人間を見渡す。それは、Aにとって味わったことの無い"家族"の食卓だった。
イル) ？
何か、不味いものでもあったの？
A) いや？…なぜだ？
イル) だって、ほら。
そう言いイルミはAの顔に手を添え何かを拭う。
A) ？！！
それは涙だった。
指摘されて初めて、Aは自分が涙を流していることに気づいた。
A) ...いや、すまない。
本当に嬉しかったんだ。俺、こんなの初めてだったから。皆で食事を取るということはこんなに嬉しいことなんだな！
イル) ...何それ
イルミはそんな素っ気ない態度とは対照的に優しくAの頭に手を乗せ撫でた。
イル) こんなことで泣かないでよ。これからはいつだって味わえるんだから。
A) いや、それとこれとは話が違うな！
Aのその変わらない態度にイルミ達は少し安堵した。
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作者名：シロ | 作成日時：2019年11月3日 22時
