(家を構えているとは...。) ページ12
警戒していたAは、その意外な問いかけに思わず後ずさりした。
A) (何を企んでいるんだ？)
それもそのはず、ここまで生死をかけて戦っていた相手に聞く質問では無いはずだからだ。
しかし、白髪の男は真剣にAの目を見据えてもう一度聞いた。
？) お前の、名は？
A) …まず、先に自分から、名乗れ。
Aは用心深く答えた。
すると、白髪の男は少し驚いた様子だった。
？) …あぁ、そうだな。
シルバだ。そしてこっちがイルミと言う。
息子だ。
そう言って白髪の男、シルバはイルミを指さした。
イルミは出会った時と同じく飄々と手を振って見せた。
Aは戸惑っていた。まさか、本当に名前を教えてくれるとは思っていなかったからだ。
A) (この男は本当に俺の名前を聞きたいだけなのか？)
Aは、迷った挙句、短く答えた。
A) ……A。
ﾊﾟﾝｯ
イル) よし、A、行くよ。
A) ！！
イルミが手を叩いてそう言い、くるりと背を向けた。
その行動にAは驚いた。
A) (普通、敵にあんな無防備に背を向けるだろうか。)
動揺するAを他所にイルミはどんどん山を上っていく。
A) 行くって、どこに行くんだ！
咄嗟にAは問いかけた。
シル) 俺たちの家だ。
そう言ってシルバもイルミの後を着いていく。
A) でも、なぜ…？急に！
イル) 後で話すから今はついて来なよ。
置いてくよ。
Aは、訳もわからず戸惑っていたがイルミの一言で着いていくことを決めた。
イル) お腹、空いてるでしょ？
A) ！！仕方ないな！
Aは食に貪欲だった。
既にAの髪と瞳の色は元に戻っていた。
＿＿
山の麓からは全く見えなかったが、今、Aの目前には大きな屋敷が立っていた。
A) (まさか、こんな山奥に本当に家を構えているとは…。)
Aのわずか14年の人生の中では最大の大きさの居住地に思わず息を飲んだ。
イル) 何してるの？早く入りなよ。
圧倒されているAをイルミが催促し、家に入れる。
家の中は壁がコンクリートで、更に殺風景な先の見えない通路が伸びていたため、とても冷たい印象をAに与えた。外からの光はなく、電灯だけが弱く光っている。
その長い通路をAはイルミと、シルバの後を追い歩いていた。3人の足音だけが響く長い廊下。
そして、イルミがある部屋の前で止まる。
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作者名：シロ | 作成日時：2019年11月3日 22時
