(何の話だ？) ページ11
首を掴まれた。Aは自ずと死を直感した。このまま締めあげられ、骨を折られる。そんな想像をして、来るであろう衝撃に備えてそっと目を閉じた。
＿生きろ。生きて、会いに来い。＿
A) ！！
生きなければならない。と、Aの脳裏に浮かんだ瞬間、視界の端から首を掴んでいる腕めがけて飛び込んでくる金色の獣が見えた。
白髪の男の腕に獣の歯が立てられた。
首を掴む指の力がほんの少し緩む。Aは腕を蹴りあげ力の限り後ろに飛び退いた。
ほんの一瞬の出来事だったが、Aは獣の正体を確信していた。
A) ハク！
それは、毛色こそ違うものの紛れもなくハクであった。ハクはAと共に山に入ったのだが、巨大な獣と戯れている際にはもう姿が見えなくなっていたのだ。
Aは、友との再会に一瞬喜ぶが直ぐに目の前の親子らしき2人に目を向け直した。
イル) 父さん、ナイフ刺さったままだよ
そう言い、首を指さした。
白髪の男は、それに気づきいとも簡単にナイフを抜き、止血のためにまた、首に力を込めた。
A) (筋肉だけで止血ができるのか？化け物かよ…)
警戒がさらに強まっているAを他所に、白髪の男は抜いたナイフを眺めて何かを確認している。
？) (毒は、塗られていないようだな)
…俺は、お前がナイフを投げるのを確認したのだが、お前はナイフを2本持っていたのか？
だとすればどこから出した？
A) …？
意外な質問にAは戸惑った。そして、自分でも分からないことに気づく。クロロから持たされていたナイフは1本のみだったからだ。
A) …知らない。
？) 見たところお前の手から出てきたように見えたのだが…
A) 何を言っている？手からナイフを出すことなど人間には不可能だろう。
Aは、本気で言っていた。目の前の男が何を言っているのか全く理解できなかったのだ。
？) …なるほど。自分でもまだ扱えていない力か。
イル) …父さん。さっきの話の続きだけど。
イルミがAに顔を向ける。
Aはすぐさま身構える。
イル) こいつ使えそうだし、こいつにするよ。
？) …しかし、良いのか？
イル) うん。強くて綺麗っていう条件は満たしてるでしょ。
？) そうか。
A) (何だ？何の話だ？)
今度は白髪の男の目がAを捉え、そしてゆっくりと近づいてくる。
Aは一気に気を張り男の一挙手一投足に注意を払った。
男はAの攻撃範囲手前で止まり問いかけた。
？) お前の名は何という？
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作者名：シロ | 作成日時：2019年11月3日 22時
