すまない。 ページ21
そういうAのなぜか自信満々な顔を見て老人の口には自然と、笑みが零れた。
？) (こやつには、何か人を惹きつける不思議な力があるのやもしれんな。)
…そうか。なら、わしが案内する代わりにちと、年寄りの散歩に付き合ってくれんか？
お前さんと、話がしたい。
Aは、その言葉に少し躊躇したが、外に出れるのならもはやなんでもいいかと思い、老人の提案を承諾した。
A) 構わないぞ！だが、俺は急いでるから手短にな！
Aはそう言って我先にと老人の先を歩き出す。
？) おい、出口はそっちではない。忙しないやつじゃのぉ。
老人は颯爽と、もと来た道を引き返そうとするAの方向音痴さに苦笑した。
A) …もちろん冗談だ！わざとだわざと！分かってた。こちらが来た道だってくらいな！
そんな言い訳をするAを他所に老人は出口に向かい歩き出した。
A) お、おい！待て！じいさん！
Aは慌てて後を追った。
＿＿＿
やはり、Aは老人について来て正解だった。
長く続く迷路のような廊下を抜けて無事外に出られたからだ。
A) おお、何日ぶりかに吸う外の空気だな！
助かったぞ、"ゼノ"！
老人の名はゼノと言った。
イルミの祖父にあたるらしく、イルミとキキョウによるキルアへの行き過ぎた教育には手を焼かされているのだ。とAは聞かされた。
Aは、あまり人の長話を集中して聞く能力は無かったので途中からは生返事を繰り返していた。
しかし、それもまた外に出た途端Aの気分は変わり急に元気になった。
その変わりようにゼノはまた驚かされた。
ゼノ) …お前さんは少し気分に流されすぎじゃ。
ゼノは呆れて、空を仰いだ。そしてAを見やった。
しかし、その場にはもうAの姿はなかった。
Aは既に山の中を駆け出していた。それは久しぶりに外に出たからと言うよりは"それ"が見えたからだ。
A) また会ったな！ええと、名前は何だったか忘れたが久しぶりだな！犬！
Aの視線の先には、Aがこの山で最初に出会い、1週間交戦した巨大な獣がいた。
ｶﾞﾊﾞｯ
Aが獣の体に飛びつく。しかし、獣は全くAに興味を示さなかった。
A) …どうしたんだ？
ゼノ) そやつの名はミケじゃ。ミケは侵入者のみに攻撃するように上手く躾けられとる。
…お前さんも見習ってみたらどうじゃ。全く。人の話の途中で…
A) あ。…すまない。
Aはゼノに申し訳なさそうに謝罪した。
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作者名：シロ | 作成日時：2019年11月3日 22時
