リルティングアワー7【BE:FIRST】

怪物、ご存じの通り頑固者 ページ43

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いつまでも社長を立たせっぱなしは良くないと、舜斗をクッションの上から退かせたAはそこに日高を座らせる。
すると物理的に彼と猫達の距離は近くなり、ますますその存在が意識の中で大きくなってきて。




「可愛いねぇ」

「はい。ご飯食べたらすぐ寝ちゃいました。触っても起きないの」

「うんうん、猫ちゃんは本当ずっと寝るものね」

「そうみたいです」

「……それで、俺に相談っていうのは？」




指先でちょいちょいと、白い“おもち”と呼ばれている方の鼻先を撫でながら、チラリとAに視線を送る日高。

『引き取り手をどうしようか』という話？……いや違うよな。




「この子達、私が飼いたいです。飼ってもいいですか？」

「………」




自分で言うのも何だが、この会社で一番決定権を持つ人間を捕まえて、疑問符こそ付いているが語気はほぼ報告に近い。要は『私猫を飼うことにしました』というのを、社長の言質を持って周りにとやかく言わせない為の根回しをしようとしているのだ。




(色んなものをすっ飛ばしすぎだね、相変わらず)




弊社の管理体制はAの前だとあまり機能しない。果たしてマネージャー陣で彼女の家に今猫がいる事を知ってる人は、いかほど居るだろうか。

その奔放さを多少危惧する気持ちがある反面、そういったところを“可愛い可愛い”と甘やかしてきたのは社長自身だ。だって日高はAが可愛くて仕方ないもので。
もし何かが起こって彼女が怒られる時は、自分も一緒に頭を地面に擦り付ける覚悟くらいはある。




「このマンションってペットだめでしょ」

「引っ越します。オレオが住んでるところペット可って前言ってたね？」

「……俺ぇ？！」

「はあ？俺んとこもOKだし」

「舜斗のところでも、どっちも近いし、空室ある方にすぐ」

「、お金かかるよ？引っ越しもだけど、猫は20年生きるからね、この子達が生きるために餌とか、病院とか、日用品も……遠征で家を開けることも多いからシッターだって雇わなきゃいけない」

「去勢は高くて1匹1万円、年一回の健康診断はワクチン込みで大体2万円くらいのところが多いみたいです。日々のお金は年間16万円くらいが平均って、この本に書いてありました。2匹だから上乗せで年間20万くらいですかね」

「………」




そう言ってAが持っていたのは某ペット情報誌。
いやはや誰に似たのか、果てしなく行動が早い。

あの倹約家のAが スラスラと万単位の出費を勘定していることに、日高はは少なからず驚いた。保護した手前 去勢やワクチンだけは済ませて里親に出します。と言う方がしっくりくるというか。


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