リルティングアワー7【BE:FIRST】

怪物、秘密(？)のにおい ページ41

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きっかけはAが翔太から貰ったものを家で焚いていたのを、舜斗が嗅いで“いいなぁ”と思ったところからだった。

今ではAより舜斗の方が習慣化しているし、ハマったら色々早い彼の家には一通りのお香セットが揃っている。




「……───〜 ♪ 」




テレビ台の上に置かれたスタンドに鼻歌まじりでお香を立てるA。人の家で我が物顔に、今日もうすでに3本目だ。




「いい匂い〜」

「また今度買ってきてやるよ」

「どこのやつか忘れたんちゃうん？」

「……アレ嘘」




直近の取材で無理やり誤魔化したやり取りに触れられて、バツが悪そうな顔を浮かべる。

ジッとこちらを振り返った目に「売り切れたらイヤじゃん」と付け足した。




(俺の匂いなのに、イヤじゃん)




市販されている時点で“俺の”なんて烏滸がましいのだが、自分達2人が気に入っているお香の匂いを他の誰かと共有するのは気が引けた。

とか思っていたらつい昨日自宅に訪れたリュウキが『シュントくんのお香いーよね！オレもやりてー！』と“一箱ちょうだい”の勢いで言っていたから、せこい独占欲なんて脆く砕けそうなのだが。




「売り切れ……るかなぁ？」

「お前忘れたの？自分の香水騒動」

「………アレはたまたまやって」

「たまたまな訳あるか(笑)」




以前のラジオで、Aがメンバーから貰った香水2つのうち片方の銘柄を暴露したところ、そのメーカーのECサイトで品物が一時売り切れるという事態が起きていた。

その時は流石のAも、自身の影響力に慄いたらしい。
それとは別に一部のメンバーから『何で言っちゃうんだよ！』と叱られた。何故そのメンバーが怒っているのか不思議なAは、男心が全くわかっていない。




「なあ、その距離であんま嗅いでると鼻もげるよ」

「ん…」

「……みづ。おいでって」

「髪の毛乾かして〜」

「だから、こっちこいって言ってんの」




ここまでのやり取りを髪の毛びしょびしょで続けていたAは、ついにテレビの前から腰を上げてソファに座る舜斗の足元に近寄った。

数分前からドライヤーを持って構えていた幼馴染をスルーするのは中々面白かった、が。




「ねぇっ、もうちょい優しく！」

「はいはい」




待たせすぎたのが良くなかったのか。
いつもより少し乱暴な舜斗の手つきに、Aはムッと顔を顰める事になった。








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