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｢今日こそは絶対逃がさへんで｣
『お願いだから待ってください……！』
ひとりになれる、と駆け込んだ喫煙所でとうとう捕まってしまった。
もう逃げ場はない、と諦めて彼に向き直る。
｢俺の事好きって話聞いてんけど、本当なん？｣
なんて直球！嫌な予感大当たり！どうしよう！
『ｳｯ……それは、』
｢誤魔化さんでや、本当なん？｣
『本当、です……』
脳をできる限りの高速で回転させてみるが、彼からの圧に負けて認めてしまう。
『ほぉ〜ん、本当やったんや』
｢本当だったらなんですか……｣
『いや、嬉しいな〜と思って』
｢別に、付き合いたいとかそういうわけじゃないんです。｣
｢ただ、勝手に好きでいただけなので…京極さんが迷惑なら、頑張って忘れます｣
振られてしまう怖さから咄嗟に予防線を張ってしまう。
彼は相変わらず何を考えているのか分からない表情で、自分の鼓動が換気扇の音に掻き消されていますように！なんて馬鹿なことを願った。
『へえ〜、そんな簡単に忘れられるん？』
｢すぐには無理かもですけど！でも頑張ります｣
最悪、きっと面倒くさい後輩だと思われているに違いない。
悪い方へと思考が偏り、手足が震えるような感覚を覚える。
『………』
京極さんは何も言わず、何か考えているようだ。
はやく、はやくこの時間が終わって欲しい。
そうだ帰ったらあれを食べよう、部屋も片付けて…なんて現実逃避を続けていると、
『……ほんなら精々がんばって忘れてや』
そう言うと、彼は煙草も吸わずに出て行ってしまった。
｢振られ、た………？｣
ああ、本当に最悪だ。
ありがとう、とかごめんな、とか、そんな言葉もなしに終わってしまった。
私の幸せな日常が終わってしまった。
明日からどう顔を合わせればいいのか本当にわからない。
その日はどうやって家まで帰ったのか、全く覚えていなかった。
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作者名：にくまん | 作成日時：2024年2月11日 20時
