・ ページ6
視界の端で鮮やかな緋色がちらついた。
「なんだ、坂田か」
「(坂田？)」
その緋色の髪をした男性は坂田というらしい。彼はおっきな目をぱちぱちしながら騒ぎ立て始めた。
「うらさんバレとるんやからな！！ひとりじめしいひんで！！」
ずるいや〜〜ん！！と騒ぐ彼は見かけによらず幼子のようでぽかんとしてしまった。やはり彼も隠しているのだろうが、妖特有の気配が見え隠れしている。この子も妖なのか。しかも上級の。翡翠の彼も呆れているようだ。
ふと、布団に押さえつけてきている力が緩んでいることに気がついた。と同時に、私は自分の上に馬乗りになっている翡翠の彼を突き飛ばし、走り出した。入り口にいる緋色の彼も突き飛ばさせてもらい、振り向きざまにお札を投げつけ結界を貼った。簡単に破られてしまうかもしれないが、まあないよりかはマシだろう。そのまま私は後ろを振り返らずに全速力で廊下を走った。
＊＊＊
ひたすらに駆けているとちらほらと見慣れた女の子達の姿があり、ほっと一安心した。それと同時にいまさっき自分の身に起きたことを思い出し、スッと背筋が冷めた。キスしてしまったことも思い出し顔が再びかあっと赤くなるのを感じた。
「(やばいやばいやばい)」
こんなところにあんな上級の妖がいるだけでも大問題なのに、それが2人もいるなんて。幸い、ここで誰か殺されたとか、失踪したとかは聞いたことがないから、先程のように精気を貰ってただけなのだろうか。流石にこれは、わたしにはむりだ。しかも、いつあの妖達の気が変わって殺されるかわからない。
「(やっぱり報告しないとだよなあ)」
楼主に許可を取ったり深夜の間に行って帰って来なければならなかったりと、このことを上司に報告するまでの手間を考えると気が滅入ってしまいそうだった。
＊＊＊
「うらさ〜ん。あのコ、逃げちゃったやん」
俺も味見したかったんに〜と頬を膨らませる坂田を軽くあしらう。
「坂田も、あいつの霊力覚えただろ」
さっきの少女が貼った結界に触れるとぴりっという音とともに札が燃え尽きた。それを見た坂田がひで〜と茶々を入れてきた。
「あったりまえやろ〜。迂闊に術使うなんて、危機感ないよなあ」
これであのコ、もう逃げられへんもんなあなんて口元に笑みを浮かべ呟く坂田も、大概だろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 461人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まつり(プロフ) - めちゃくちゃ好きな感じのお話で今後がすごく楽しみです！お身体に気を付けて更新ファイトです！！！ (2020年4月26日 0時) (
レス) id: dc65f13ca7 (このIDを非表示/違反報告)
しおた(プロフ) - わたぐもちゃん@推しが尊い連盟さん» ありがとうございます！拙い作品ですが、頑張ります！ (2020年4月7日 17時) (レス) id: 4a32e0fe09 (このIDを非表示/違反報告)
わたぐもちゃん@推しが尊い連盟(プロフ) - すごく素敵な作品ですね！！！妖とかいろんな世界観が素敵で………応援してます！ (2020年4月5日 11時) (レス) id: f4327bfb3f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しおた | 作成日時：2020年4月4日 22時
