閑話 ページ9
30.5 (2)
そんな時、まふが私の家に転がり込んできた。従兄妹である彼は昔から私の事を心配してくれた。まるで兄妹のように。そんな彼が、ボロボロと涙を流しながら転がり込んできたのだ。
大変動揺した。何があったか問うと、耳を塞ぎたくなるような話がまふの口から零れた。
あの頃は思考があまりにも幼かった。まふが受けた負の感情を、まふの話を経由して同じく私も一心に受けた。まふも私も限界だった。柄にもない約束を交わしては、お互いで心の隙間を埋めるしか選択肢が浮かばなかったんだ。馬鹿だと思う。けどその時はそれ以外無かった。
時折、なっちゃんからのメッセージが入る。彼は忙しくも充実した生活を送っているようだ。なのになんだ、私は。自分がどうしても汚いものに思えた。
段々となっちゃんとは疎遠になってしまった。
まふと私の共依存に一時的終止符を打ってくれたのは、そらるさんだった。そらるさんはまふを救ってくれた。私ができなかった事をしてくれた。私はちっぽけでどうしようも無い存在なのだ。
気が滅入る私に追い打ちをかけたのは祖父の死だった。祖父は厳格な人だった。本心ではゲームもネットだって快く思ってなかっただろう。それでも、一定の成績さえ保てば趣味に対しては口出しすることは無かった。祖父は皮膚の分厚い大きな手でよく私の頭を撫でてくれた。それがたまらなく好きだった。
そんな祖父を追いかけるように祖母も逝ってしまった。祖母は私の身体をとても心配してくれる人だった。ひとり暮らしを始めると学校の間に作り置きを冷蔵庫に入れ、『体には気をつけなさい。』と毎度メモを置いていく。何時でも食べることが出来る祖母のご飯。これも又たまらなく好きだった。
何も無くなって空っぽになった私は自傷行為に走る。それを止めるためにもまふは私との半同棲を提案したのだった。それからは平穏な日々を送る。
今となっては半同棲を解消するくらいには私も回復した。
ひとりで過ごすようになって感じた事は、私は別に独りで生きている訳では無いらしい。何気なく過ごす日々には必ず誰かがいる。そんな日々が愛おしくて仕方がない。
きっとそれをそらるさんがまふに気づかせてくれる。だから、大丈夫。
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作者名：油性ペン | 作成日時：2019年10月20日 22時
