戻れない金糸雀の夢を見て ページ24
#45
ん、まぶし……。
カーテンから零れた光が眩しくて目が覚める。
昨日のままの服、見知らぬ天井、知ってる香り。
「はぁ……。やらかした」
酔いで記憶が無くならないのも考えものだな。キヨさんの前では記憶飛んだフリでもしとこうか。
頭の中で必死に言い訳を考えてたが、記憶が無いのだから考えても意味ないと自己完結する。
以前の記憶を思い出しながらも、リビングへ移動した。
録画したドラマを片目に、スマホを弄るキヨさん。
なんだか、彼氏みたい。
「Aさん？起きたのか。おはよ」
「あ、、おはよございます。」
「寝癖、ついてる。洗面所つかっていいから、直してこいよ」
「はい」
おそらく跳ねているのであろう髪を抑えるようにキヨさんが撫でる。
っ〜〜！あぁ、もう！！！昨日の事(実質今日の事だが。)も含め、私は何やってんだ！
冷たい水のおかげで目が覚めてくる。思い出す、思い出す、昨日の事。何これ、走馬灯？は？死ぬの私。
「私、あの時、名前言ったんだっけ……？」
寝落ちする前の、キヨさんの質問に対する自分の答えだけが思い出せない。
「どうしようか……。」
───
──
─
ビニール袋の摺れる音と共にキヨさんが歩いてた。
「？？？」
「UberEATS」
「あぁ。」
さっき、インターホンが鳴ったのはこれか。
「何食べたいか、わかんなかったからテキトーだけど」
「いえ、すみません。ありがとうございます」
何を言うでもなく、少し遅れた朝食を口にする。
「あー、そうだ。まふが迎えに来てくれる予定だったけど、来れなくなったっぽい」
「え、連絡までしてくれてたんですかっ。ありがとうございます」
「いーよ、いいもの見られたし」
「いいもの？」
「秘密」
「ぁ……」
記憶をたどってやめた。墓穴を掘りかねない。私は今記憶が無い。私は今記憶がない。いいか。な い ん だ ぞ ！
「覚えてる？」
「全くです」
「そー？」
笑みを堪えるキヨさん。
なんだよ、このやろ。
．
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作者名：油性ペン | 作成日時：2019年10月20日 22時
