悲観的存在論 ページ23
#44
side：キヨ
はぁ〜。推しが尊いとはこの事か。目の前でAさんがはしゃいでる。好きと伝えた手前、俺自身羽目を外しそうで怖い。良いか、キヨ。目の前にいるのはお前の【 推し 】である【 れむ睡眠 】だぞ。
5分毎に自己暗示。そうでもしないと、終わる。何がとは言わないが、確実に終わる。
ゲームチェアに座って足をぶらぶらさせるAさん。以外に足癖悪いのな。
「Aさん、楽しい？」
「うん、ｼｬﾁｮさんになった気分」
「ｼｬﾁｮさんってwしゃちょー、はい」
「しゃちょー」
社長気分に飽きたのか、俺の所に千鳥足で向かってくると、足元にストンと座った。
「あのね、キヨさん。私今日、失恋してきたんですよ」
唐突な、その宣言に息苦しくなった。
「キヨさん。キヨさんに会う前の話だからそんな顔しないで」
ぺちぺちと俺の頬を触るAさん。
「そしたらね、なっちゃん変な事言うんですよ。」
そのなっちゃんと言うのがAさんの好きだった人なんだろーな。はぁ。シンプルに嫉妬するわ。どんな奴なんだろ。優しい人？かっこいい人？大人っぽい人？気使える人？俺にない何かを持ってる人？
「あのね、キヨさん、私恋してるんだって」
一瞬、頭が白に染った。頬に触れてたAさんの指に指を絡める。
期待していい？Aさん。
「……Aさん。誰に恋してんの？」
朗らかに笑うとAさんは、俺の手を握ったまま。目を閉じた。
……目を閉じた？
「あぶな、っ」
そのまま床に倒れそうになるAさんを、手を引いて捕まえる。
所謂、床ドン状態。
「おーい、寝んなって」
目の前には、幸せそうに眠る可愛い顔しかない。
酔っ払いの癖して可愛い顔するなよ。おい。こら、手をギュッてするんじゃない。頼みのまふも仕事が大詰めらしく、来るのは朝になるみたいだ。
まじか、生殺しかよ、この状況。
ちょっとした腹いせに、俺のベッドにAさんを放った後、でこにデコピン食らわす。
「こんくらい許せよな」
少し赤くなったその場所にそっとキスをした。
．
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作者名：油性ペン | 作成日時：2019年10月20日 22時
