君の唇を掠めた箒星 ページ17
#38
蹲ったキヨさんの顔を覗き込もうとすると、大きな掌で頬を覆われた。
「Aさんが、引くかもしれないって思って言わなかったんだけどさ」
「なんですか？」
「俺、Aさんが北海道いるって聞いて衝動でここまで来たんだよ」
何時もなら、視界を覆われてる所だな。キヨさん、照れてる。
少し眉間に皺を寄せて口を結ぶキヨさん。寒さのせいか、それとも照れのせいかほんのり頬が染まっている。
「もしも、ですよ？たまたまキヨさんが北海道にいて、私もそれを知らずにココに来て。そうだったら、もしかしたら、運命かもなんて思っちゃいますよね。」
「まぁ……そうかもな」
「それって凄く胸が踊ることだと思います。多分。でも、私、キヨさんが私の為に時間をかけて来てくれたって事が、運命がどうとかどうでもよくなるくらいに、嬉しくて仕方がないです。」
きっとインスタのストーリーみて私がここにいるのを知ったんだろうなぁ。
私の顔をじっと見るキヨさんが、どうしようもなく愛おしく感じてしまう。其れを、愛だの恋だの区分しろと言われても私には到底できやしない。誰にも冒されたくない位に尊いものに感じた。
「まじで、言うつもり無かった」
そのままキヨさんとの距離がゼロになる。慣れない足下のせいでバランスが取れなかった私。そんな私を支えようとしたキヨさん。その頑張り虚しくそのまま雪にダイブした。
「……好き、まじで。訳わかんねぇくらい好き。れむ睡眠としてじゃなくて、Aさんが。本当に好き。」
キヨさんの体重を身体全体で受け止めているせいか、少し息苦しい。
「ただ、好きってのだけ知ってて欲しい。もう自分の中だけで留めさせるの無理。」
「キヨさん、？」
「あぁ、まって、知ってて欲しいは嘘だわ。俺、どうしようもないくら位にAさんと一緒にいたい。」
「え、えと、、その」
「ねぇ、Aさん。ここまで言ったら流石に開き直るわ、コレからまじで覚悟してろ」
「、ちょ？、、えぇ……」
人間の心拍数には限度があるんだ。
なにか意気込んだ表情をするこの人から、私はいつか確実に殺される。
街灯に照らされた星が降る夜。冷たく真っ白な絨毯に転がる2人。息が荒くなるくらいには上がった心拍数。こんなの、まるでドラマのワンシーンじゃないか。
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作者名：油性ペン | 作成日時：2019年10月20日 22時
